窓からこっそり帰ってきた。
イオンの靴を脱がせて部屋に入れると、Tシャツと緑のメンパンを選んで彼に手渡す。
パンツは男物派なので問題はないはずだ。
足の長さが問題だが、八分丈のパンツなので大丈夫だろう。

「イオンの方がちょっと身長高いけど…大丈夫とは思うよ。あ、さすがに男の子を泊めるって親にはいえないから、女ですとは言わなくてもいいけど、男ですとも言わないでね」

そう、笑いながらいうと、すみません。といわれた。すみませんじゃなくてありがとうでしょ?って言って部屋から出る。
着替え中に居るのはちょっとね。やっぱ駄目かなと。

「着替えたー?」

どうぞの返事で中に入ると、あらー。中性的な感じはするが、やっぱり男の子なんだなって出来栄えでした。
うん、これはバレる。

「イオンが中性的に見えたのはあの服と髪飾りのせいだったのね…」

意外にある身長やすっきりした胸板が男の子を強調しており、Tシャツではちょっと隠し切れない。

「ごめん、女物で悪いんだけどこれを上から羽織ってくれる?」

渡したのはフードが付いた花柄の上着で、Tシャツの上から羽織ってもらってチャックを胸元あたりまで上げると、まぁ、どうにかボーイッシュな女の子の出来上がりだ。
花柄で嫌がるかとは思ったが、異世界の人にはこっちの服がよく分からないようで「女性物なのですか」と感想をもらした。
よかった。

それから、もう一度窓から出てもらい、玄関からイオンをお招きして部屋に上がってもらう。

両親には、「日曜まで友達が泊まるから」とだけ言い、イオンは律儀にも挨拶をしていたが、男の子だということはばれもせず了承いただいた。

時計を見るとまだ夜の9時で…いつもだったらもう少し山にいる時間だなぁなんて思いながらイオンを見る。
彼はこちらの世界のもの何もかもが珍しいようで、私の部屋をなめるように見ていた。
うーん。あんまりきれいにしてないから見られると恥ずかしいんだけども。

「イオン、ちょっと早いけど先にお風呂使っちゃってよ」

「お風呂…お借りしてよろしいのですか?」

「もちろんでしょ。早く入ってお話しよう!私、イオンの世界の話とか興味あるな〜〜」

「期待に沿えるような話はできないかもしれませんよ?」

クスクスと笑いあってお風呂に連れて行くと、どうやらお風呂もイオンの世界のものとけっこう違いがあるらしかった。
シャンプーがこれで、ボディーソープがこれで、お湯がこうやって出てーって教えると、とても興味深そうに聞いている。
時間をかけて丁寧に使い方を教えて、ついでに洗面台とかトイレの使い方を教えておく。
それから私は彼の分の布団を敷くために部屋へと戻った。

「ううん、自分で泊めるって言ったんだが、やっぱり同じ部屋で異性が寝るって…緊張するな…」

なんて苦笑いをしながらお布団をだす。だって、いくら見た目が可愛いからって、男の子だよ?
そんな心配はない!と思いつつ、ベッドから少し距離を置いて布団を敷いた。
いや、だから別に心配はしてないんだって!
ちょっと恥ずかしいなって思っただけで!

それから、おそらく手間取っていたのだろうイオンは、23時を過ぎた頃に部屋へと戻ってきた。

「す、すみません。時間が掛かってしまって!」

寝巻きはさすがに小さいかなぁと思ったので、彼には学校指定のジャージを着てもらった。
高校では少しダボっとジャージを着るのが流行っているので、ちょうど良く着れているんじゃないかと思う。

「全然大丈夫!本読んでたしね。ってイオン!髪の毛濡れてるじゃない!ドライヤー使わなかったの?」

「はい、あの、使い方がいまいち分からなくて・・・」

えへ、と笑うイオンはまたすごく可愛いい!
いやいや、そうじゃなくて!

「ドライヤー知らなかったのかー。ごめん教えてればよかったね。ちょっとまってて!」

言うが早いか洗面所からドライヤーを持ってきた私は、ベッドの横にあるコンセントにつなぎ、ベッドに座る。
イオンにコイコイと手招きをすると、不思議そうな顔をしながら私の足元に背を向けて座った。
よし、と、ドライヤーのスイッチをいれ、髪に風を当てたところで、彼は「ふわぁぁぁぁぁぁぁ!」と、変な声を上げたかと思うと一目散に部屋の隅へと逃げ出した。
スイッチを切ると、顔を真っ赤な顔して「な、何事ですか!」と頭を抱えながらへたり込んでいるイオンの姿。

「なにって。。。だから髪を乾かそうとし・・・」

ぶっ!
だめだ。笑ったらいけない。
イオンはドライヤーがなにか知らなかったんだから当然の反応なんだよきっと!
でも…
「も、もうだめ。おかしすぎる!!」

最初キョトンとしていたイオンだったが、肩を震わせて笑う私をみて恥ずかしくなったのかうつむいてしまった。
それがまた可愛くて笑いがとまらない。

「わ、笑わないで下さいよ、、、ヒトミー。」

「ごめんごめん、これ、ドライヤーって髪の毛を乾かす道具なんだよ。スイッチを入れると暖かい風が出て、その風で髪を乾かすの。」

もう一度コイコイ。とイオンを足元に呼んで、髪に風をを当てる。
ちょっと微妙な顔をしていたが素直に足元に来て、今度こそ髪を乾かし始めた。
乾かすときに耳まで真っ赤にしているところを見てしまったが、ここは黙っておこう。と、また笑いに耐える自分がいた。

美容室でどうやってドライヤーをかけてもらってたか思い出しながらイオンの髪を乾かしていく。
にしても、初めてイオンを見たときも思ったんだけど、髪の毛綺麗だなー。

「イオンの髪の毛って綺麗だねー、サラサラだ!」

「そうですか?普通だと思うのですが」

「ね、髪の毛が緑色なのって染めてるの?それともイオンの世界の人って皆緑色なの?」

ドライヤーをあてながらの会話は聞き取りにくいらしく、なんども首をかしげるので、「後で言う」と一言いって、乾かし終わるまで話しかけないようにする。
数分後、髪の毛が乾き終わったので、ドライヤーを切って先程の質問を繰り返した。

「全員が緑色なわけではないですよ。ヒトミのような黒髪の方もいますし、赤い色やクリーム色、オレンジや金色などの方もいらっしゃいます。ヒトミの世界の方には僕のような髪の色をした人はいらっしゃらないのですか?」

「へぇ!地毛だったのか!!かっこいいね!赤とかオレンジって・・・みんな髪の毛カラフルなんだねぇ。こっちの世界は基本的に黒と金しかいないかなぁ。その中間色はあるけど。えっと、茶色とか。緑の髪の毛の人がいるとしたら、染めてる人だけだよー」

はい、ドライヤー終わりっ!と、続けていうと、イオンは自分の髪の毛を触りながらにっこり笑ってありがとうございますといった。
今日一日で彼のありがとうを何回聞いただろう。
しかもとびきりの笑顔で言ってくるもんだからもう…!
この笑顔はまりそう!!

「じゃあ私もお風呂に入ってくるね。お布団は敷いたから、イオンは先に寝てていいよ。」

そう言って、起きて待っているという彼を布団に押しつけ、電気を消してお風呂へ向かった。
イオンの世界の話は明日ゆっくり聞くとしますか!

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