「シンクはこんなところで何をしていたの?」

名前を教えてもらったことですごく仲良くなれた気がして、さっそく世間話でも…と、ニコニコしながら話しかけた。
相変わらず腰が抜けたままの私は地面に座り込んでいて、シンクは腕組みをして柱に寄りかかっている状態だ。
会話をするには若干距離を感じるのだが、今は名前を教えてもらっただけでもよしとするべきなのだろう。
やっとコミュニケーションが取れる状態になったぞ、と意気込んで質問をしたのだが、その記念すべき質問の答えは

「あんたって、変わってるよね。」

だった。
あれ?シンクさんは言葉のキャッチボールが苦手なのでしょうかね。
私の質問の意味むずかしかったかな。
あれ、そんなことないよね?

「えっと…どう答えればいいのか反応に困るんだけども・・・。」

予想のはるか斜め上を行く質問の答えに戸惑いを隠せない。
生まれてこの方、変わってるなんて言われたことがないので余計である。
まだシンクとは会話という会話が出来ていないのに、私のどこをみてそう思ったのだろう。

なんだかすごく凹んでうなだれていると、ちょっぴり罰の悪そうな顔をした(ように見えた)シンクが、再度口をひらいた。

「さっき僕に殺されそうになっておいてよくそんなニコニコと話しかけられるね。」

あ、なるほど。そういう意味の変わってるだったのか!
うん、まぁ普通はそうだよねー。
殺されそうになった相手にニコニコ話しかけたりなんて普通しないよね。

人格否定でないことにホッとしたわたしは、うーん、と天井を見ながらなんて答えようかと考える。

「そりゃ…さっきの刃物突きつけられたのは怖かったけど、今は殺さないって言ってたし…わたしさ、怖いのダメなんだよね。」

「はぁ?だから怖かったんだろ?ダメならなんで引き止めるのさ」

腕組みをしていた腕かほどかれ、少し前のめりになる。
そんなに驚かなくても…と思いながら、怖いの意味の訂正をすべく言葉を続けた。

「いや、だからその怖いじゃなくって、オバケがね、怖いの」

「・・・」

シンクは、目を一瞬見開いてから、その後ゆっくりと細めた。
この動作には覚えがある。
はぁ?ってなったあとに、こいつバカじゃない?って思う時の仕草だ…
絶対そうだ!そうに違いない!

「むぅ!シンク今、あたしのこと馬鹿にしたでしょ。人には苦手なものの一つや二つあるものよ!それに、こういう古い所とかおどおどろしい所がダメなだけで、なんでもかんでも怖いわけじゃないんだからね!」

言うと、シンクは本日何度目かのため息をついてから両手を頭の後ろに組み、再び柱へ寄りかかった。

「そんなものが怖くて刃物をもった僕は怖くないわけ?」

いや、あれはあれで怖かったよ。
腰を抜かす程度には怖かったさ!
だけどなんでかな…
シンクの顔がイオンに似てるからかな?心の底から怖いとは思えなかったんだ。
話しをしてみると、気持ちのいいほど俺様っぷりが面白くて、怖いどころか好感すらもったほどだ。

「いや、だから今は殺さないっていってたしさ、シンクが・・・」

「僕?」

「うん、シンクと話してるとそんなことどうでもよくなっちゃった。あ、イオンって知ってる?兄弟かと思ったのにさっき無反応だったから違うのかな?ローレライ教団ってところの一番偉い人らしいから知ってるかもね。はじめシンクの顔見た時に、そっくりだと思って好感もったんだと思う。でも全然だったわ」

「それどういう意味さ」

「イオンはとっても優しいもん。シンクみたいに私のことばかばか言わないし。」

「だって馬鹿でしょ。」

「馬鹿じゃないもん!ほらねー、もう、失礼なんだから。」

でも、なんかシンクの馬鹿が心地よくなってきてる自分がいる。
うん、なんてゆーか、シンクの「馬鹿」は本気に聞こえないんだよね。
コミュニケーションのひとつのような、そんな感じがして…言われる度に心を開いてくれてるような気がするんだけど、これは私の思い込みかな?

ふふっと小さく笑うと、またもシンクが変人でも見るような目で私をみてきた。
その目が面白くて、さらに笑ってしまう。

なにこれ、シンクのどこが怖かったんだろう。
こんなに面白い人はなかなかいないよ!

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