兄…だと?

ヒゲのおじさまがやってくるのを見て、一番に声を上げたのはルークだった。

「ヴァン師匠!!!」

叫んだと思ったら、今まで見たことのないような満面の笑を浮かべて、急いでそのヴァンと呼ばれた人の元へと駆け出そうとした。
ルークにベッタリとくっついていたアニスにぶつかるが、お構いなしだ。
しかし、そのルークの前にティアが立ちふさがり、しかもヴァンに向かって武器を構えた。

「ヴァン!!!」

今にも攻撃を仕掛けそうなティアに、ヴァンは冷静に話しかける。

「ティア、武器を収めなさい。お前は誤解をしているのだ。」

「誤解?」

つぶやきながらもヴァンを睨むティア。
その武器を収めさせたのはジェイドで、騒ぎを起こされては困るという彼の言葉にしがたって、ティアは一度武器を下げた。
それから、二人に話し合いが必要だと感じたイオンとジェイドは宿屋に向かうことを提案する。
一同異議なしということで、私たちは近くの宿屋へと移動した。

部屋のテーブルに座り話を進める中、蚊帳の外な私は、ミュウと一緒にベッドに腰掛けていた。
深刻な話をしているので、横で聞いているのも申し訳ないなぁと思ったのが理由のひとつだ。
ミュウの手をにぎにぎしたり、お尻をつついたりして遊んでみる。
顔を真っ赤にして、「やめてくださいですの!」って言うミュウが可愛すぎるので、ついついいじってしまうのだ。


「モースが戦争を望んでいる以上、僕は、それを見逃すことができなくて…」

「なるほど、それでイオン様はダートの教会から姿を消されたのか。」

「すみません、ヴァン。僕の独断で迷惑をかけてしまって」

「いえ、私のことは構わぬのですが、六神将が動いているとなると…」

イオンとヴァンが深刻に話ていたのだが、ヴァンが六神将の話をし始めたところで、我慢ができなくなったのだろうティアが話に割って入った。

「兄さんが彼らを差し向けたのでしょう?どうして平和を望むイオン様の邪魔をするの!!?」

「えっ!兄さん!!!?」

ティアのセリフを聞いて、私は思わず、弾けるように声を上げてしまった。。
その上ティアとヒゲのおじちゃんを交互に舐めるように見てしまい、更に「うそ…」と声に出して驚いてしまう。
だって余りにも…その、似てないんだもん!

「ぶっ!」

声のした方を向くと、ガイが腕に口を押し付けて声を噛み殺していた。
更にジェイドが顔だけ後ろへ向けて肩を震わせてる。

それにつられるようにしてアニスもイオンも両手で口を抑えて…

ルークとティアと私は、なにが起こっているのか分からずにその光景をポカーンと見ていた。
ヴァンは少しこめかみに青筋を立てているような気がするのだが気のせいだろうか。

「たしかに、ヴァン謡将とティアはあまり似てませんね」

イオンがそう言ってはじめて、なんでみんなが笑っているかに気がついた私は、一気に血の気が引いた。
ひいいいい、私はまたとんでもなく失礼なことを・・・!

「いいい、いや、そんなつもりじゃなかったんだけど、ヴァンさん、ティア!ごめん!えと、わ、私は向こうに行ってますのでお話の続きをどうぞー」

言うが早いか、スススっとゆっくり後ずさってベッドへと座り直した。
みんなの視線が痛かったが苦笑いをしてごまかす。
いや、誤魔化せては居ないのだがそうしないと気まずくてたまらなかったのだ。

シリアスな話をしていたのに水を指しちゃった…うう。反省。
何ためにベッドに離れて座ってたんだ私は。
でも、あの二人は似てなさすぎだよ。
おなじ遺伝子が流れてるとはおもえなかったんだから仕方がないじゃない!!

「あー、六神将だが、私の部下ではあるが大詠師派でもある。おそらく、大詠師派の命令で動いているのだろう。」

何事もなかったかのように、ヴァンは話を戻してくれた。
えっと、本当にごめんなさい。

「そんなはずはないわ。モース様は本当に平和を望んでいる。だからこそ私に捜索を・・・」

「大詠師からの命で捜索しているもの…第七譜石か。」

第七譜石。その単語を聴いたとたん、みんなは息を飲んだ。
私も話の内容が気になって仕方がなく、耳を傾ける。
そんな中、空気を読まないルークが「第七譜石?・・・ってなんだ?」と質問をし、みんなの緊張が一気に崩れた。
ルークと私のダブルコンボでシリアス展開が台無しである。

イオンは苦笑いをし、ルーク様ぁなアニスも微妙な表情を浮かべる。ジェイドは呆れて咳払いをし、ガイは白い目をしてルークをみた。
ティアは呆れた顔をしつつも、説明をしてくれる。

「始祖ユリアが2000年前に詠んだ予言よ。世界の未来史が書かれているの。」

私が頭にはてなを浮かべていると、にっこり笑って、イオンが説明の補足を入れてくれた。

「あまりに長大な予言なので、それが記された譜石も、山ほどの大きさのものが7つにもなったんです。それが様々な影響で破壊され、一部は空に見える譜石帯となり、一部は地表に落ちました。」

「譜石帯?」

「惑星の周りを回る天体のようなものです。」

私の質問にジェイドが答えてくれた。つまりあれか。土星の輪っかのようなものか。

「地表に落ちた譜石は、マルクトとキムラスカで奪い合いになって、これが戦争の発端になったんですよ。譜石があれば世界の未来を知ることが出来るから…」

アニスがいうと、ルークはなるほどなぁと頷く。

「つまり、七番目の予言が書いてあるのが第七譜石なんだな?」

「第七譜石はユリアが予言を詠んだ後、自ら隠したと言われています。故に様々な勢力が第七譜石を探しているのですよ」

ジェイドが最後の説明を終えると、しばらく沈黙が続いた。
今の話を総合すると…
でもそれはつまり、第七譜石を手に入れた人は世界を手に入れたも同然なのではないだろうか。
その第七譜石を探していると言うことは、やはりそのモースという人、怪しいのでは…と思ってしまうのは、私がわたしだけかな。

「まあいい。とにかく私はモース殿とは関係ない。」

その言葉に顔を輝かせたルークは、にっこり笑った。
さすが俺の師匠、というように。



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