セントビナーの宿屋についたが、ここには第七音譜術がおらず治癒術は施せないということだった。
仕方ないので救急箱を借りて、簡単にだがティアの腕の手当をする。

ティアをベッドにねかせてから、私が巻いたハンカチをとって薬とシップのようなシートを貼り、包帯を巻く。
止血がきいたのか、宿についたときには血は止まっていたので一安心だ。

ティアが目が覚めるまで休憩ということになり、イオンと私はベッドの横の椅子に座った。
ガイとジェイドはちょっと外へ、ということで部屋から出ていく。
ルークは責任を感じているのか、ティアの横に立ち尽くしたまま、彼女をじっと見つめて動かない。
椅子に座るようにすすめたが、無言で断られた。

「ルーク、さっきはどうしたの?いつものルークらしくなかったけど…」

じっとティアを見ているルークに話しかけると、ちらっと私を見て、またティアへと視線を戻した。
話してくれないかな?って思ったけど、ティアを見たままポツリと話し出してくれた。

「人を…殺したんだ。」

すごく辛そうな顔。
こんな辛そうなルーク初めて見た。

「それは…さっきのタルタロスで?」

「急に飛び出してくるから!あいつが!だからびっくりして…剣をむけちまって…そしたら…」

ぎゅっと目をつむって辛そうにしているルークを見ると、なんか目の奥が痛くなった。
私、戦えないからってずっとルークに戦わせてて…
それを当たり前だと思っていたかもしれない。

だって、ライガクイーンと戦う時も、ルークはずっと嫌がっていた。
ライガを心配してた。
卵の心配してた。

ルークが優しい人だって知ってたのに、甘えてた。

「ルーク、ご、ごめ…」

「はぁ?」

思わず謝ると、ルークに怪訝な顔をされる。
だって、でも謝らずには居られない。

そんな私に複雑そうな表情を浮かべるルーク。
私たちになんと声をかけたらいいのか分からずにいるイオン。

なんとなく沈黙が続いていたが、それを破ったのは、ティアだった。

「ティア!!」

「ティアさん!!」

ゆっくりと目を覚ましたティアに、私とミュウが急いで話しかける。

「ティア、具合はどうですか?」

イオンがいうと、なぜ自分が寝ているのか分からないといった感じでティアが起き上がった。
しばらくボーっとしていたが、状況を思い出したのか、「ご迷惑をおかけしました。」と一言言って、自分の治癒術でケガを完治させてしまった。

す、すごいよな第七音譜術って!
一瞬でなおっちゃったよ!!

そんなティアを複雑そうに見ているルークは、なんて言葉をかけていいのかわからないのだろう、さっきから、「あ」だの「う」だの声を出そうとしては飲み込んでいた。
そこに、出かけていたジェイドたちが、タイミングよく帰ってきた。

「気がつきましたか?ティア。傷はどうです?」

「あ、はい。先ほど自分で…。もう大丈夫です。お気遣いありがとうございます。」

そう、ティアがにっこり笑ったところで、勇気を振り絞ったのだろう、ルークの声がやっと言葉になった。

「あ、あの・・・」

「ルーク!あなたは大丈夫だったの?」

あやまろうとしたところでいきなり自分の心配をされて面食らってしまったルークは、謝るタイミングを逃して言葉を詰まらせてしまう。

「私は・・・あなたが民間人だと知っていたのに、理解できていなかったみたいだわ。ごめんなさい。」

「な、なんでお前が謝るんだよ!怪我したのは・・・お前だろ?」

「軍人である限り、民間人を守るのは義務だもの。そのために負傷してしまったということは、私が非力だったということ。」

その言葉をきいて、ルークはティアの言葉を思い出す。

(私だって好きで戦っているわけじゃないわ。やらなければ...やられるもの)

いっそう複雑な顔になったルークを見に見かねて、「そういえば、お二人はどこに行ってたのかなー!!」と、ジェイドとガイに話をふった。
これ以上重たい空気には耐えられないようう!

「そうそう、アニスから伝言がありました。」

ジェイドはポケットから手紙を取り出すと、それを私に寄こしてみせた。

手紙を開いてみたが…

そうだった!私この世界の文字読めないんだった!!!
涙目になっていると、クスリと笑ったイオンが、私から手紙を受け取って読み始めてくれる。
うう、笑いやがったなこのやろう!

「親愛なるジェイド大佐へ。すっごい怖い思いしましたけど、第二地点になんとかたどり着けました!例の大事なものはちゃんと持ってます!褒めて褒めて〜!アニスのだぁぁい好きな、やだ!恥ずかしい!告っちゃったよぉぉ!ルーク様はご無事ですかぁ?すっごぉく心配しています!早くルーク様に会いたいですぅ!ついでにイオン様の事もよろしく!アニスより」

「う、うわぁ・・・。アニス、タルタロスからあんな落ち方したのに…元気だね。」

私が冷めた目をしながらいうと、イオンが更にクスクスと笑ってた。
ガイはルークに「モッテモテだね〜」ってからかって遊んでる。
でもルークの砂吐きそうな顔してるのがちょっと面白かった。

「で、第二地点というのは?」

ガイがジェイドに聞くと、

「国境線のある、カイツールの軍港のことですよ。」

「と、するとー…。フーブラス川を渡った先だなぁ」

「おやぁ?ガイはキムラスカ人の割にマルクトに土地勘があるようですね」

私は異世界人ですが、土地勘は全くですよ。

「いやぁ、卓上旅行が趣味なんだ」

って、ガイはお父さんのような趣味をされてますね!!!
心の中でツッコミをいれながら、土地勘の無い私ですが、カイツールの軍港を目指して出発することにした。

うん、卓上旅行をすれば地理覚えられるかな。いつか機会があったらガイに卓上旅行の楽しさを伝授してもらおう!



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