ティアとルーク
「追っ手です!!!」
休憩をしていた場所がが一気に戦場に変わったのは、そろそろ出発しようと言う時だった。
ガシャンガシャンという音と共にやってきたのは、先程タルタロスで見た兵士。
ガイとジェイドは先陣を切り、目にも止まらぬ速さで敵を数人倒してしまった。
ティアはイオンと私を後ろに下げてから武器を構える。
私はオロオロしながら様子を伺っていたが、ルークの様子がおかしいことに気がついた。
なんか…震えてる?
魔物と戦っていた時のルークは、まっさきに剣を抜いて戦いに挑んでいた気がする。
それなのに、剣を抜くこともせずに呆然と兵士を見てるのはやはりおかしい。
疑問に思ってルークに話しかけようと近づきかけたとき、一人の兵士がガイ達を抜いてこちらへ飛び出してきた。
「あぶないっっ!!!!」
私の前をティアがすごいスピートで駆け抜ける。
そして、、、
ルークを狙って振り上げた剣に自ら飛び込んで左腕をざっくりと切られてしまった。
「ティア!!」
私とルークの声が重なる。
さらに兵士はルークに剣を向けて再び振り上げた…ところで、追いついてきたガイに切られて倒れた。
「ティアっ!大丈夫?ティアっ!!」
急いで彼女のもとに駆け寄る。
左腕の出血がひどい。
ポケットの中に入っていたハンカチを急いで取り出し、歯を使ってハンカチを半分に裂く。
完全に裂く前に止めて、ハンカチを長くしてからティアのケガの少し上を縛った。
布が足りないので、制服のカッターシャツの袖を裂き、切られた箇所に当てて巻く。
その間にガイとジェイドが全ての敵を倒してティアの元へと駆け寄ってきた。
「ジェイド、ティアの出血がひどいの。早くちゃんと手当をしないと!!」
「私には七音素がないので手当ができません。セントビナーはすぐそこです!急いでティアを連れていきましょう!」
ジェイドの返答を聞き終わらないうちに、ティアを抱き上げて背に背負う。
急がなきゃ、ティアの腕を早く手当しなきゃ!
その気持が焦ってティアを背負ったのはいいものの、私よりもティアの身長が高いために足を地面に引きずってしまう。
気絶してる人間って、どうしてこんなに重いんだろう!
見かねたジェイドが私を手伝おうと手を出そうとしたとき、ルークが複雑そうな顔をして、ティアの右腕を引いた。
「俺が・・・」
「ん?ルークどうしたの?早くセントビナーに急がないと」
ルークの行動の意味が分からずにそう言うと、私の肩からティアを引き剥がして自分の背へと担ぎなおした。
「え、ルーク?」
なぜルークがティアを担いだのか不思議に思って顔を覗くと、バツの悪そうな表情を浮かべる。そして、「いそぐんだろ?」と踵を返し、走りだした。
そっか。ルークを守ってケガをしたようなものだもんね。
気にしてるんだな。
「ありがとうルーク。ティアのためにセントビナーに急ごう。」
そうして急いでセントビナーを目指して再び走り出した。
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