「話は分かりました。多少信じがたい事ではありますが、嘘を言っているようには見えません。信じましょう。」

メガネをくいっと上げながら、ようやく信じてくれたみたいだ。
イオンと顔を見合わせてホッと笑顔を見せたのもつかの間、今度はティア達に向き直って話を続け出した。
そうだった。
私の異世界話は別の話であって、ジェイドの本当の目的は私たちの身元確認と、不正入国の真意を確かめることだ。

「ジェイド大佐!今回の件は偶然発生した超振動に私たちが飛ばされてきてしまっただけです。マルクトへの敵対行動ではありませんし、もちろん神託の盾騎士団も関係ありません。」

ティアが必死に説明するのに対して、ジェイドはあくまでクールに「そうでしょうね」と呟いた。

よかった。
なんかいらぬ誤解は解けたようだ。
ルークを見ると、まだ彼は警戒を解いておらず相変わらずジェイドを睨みつけている。

「ジェイド、ここはむしろ、協力をお願いしませんか?」

協力という言葉に疑問符を浮かべるルークとティア。
わたしも、今までの話の流れからなぜイオンがそのような言葉を口にしたのかが分からずに彼を見た。

ホド戦争、と言うのが15年も前に起こったらしい。
その戦争の休戦とともに形だけの平和は戻ったが、最近、また戦争が勃発しそうになっているという。
ルークの敵国、つまりジェイドの国の国王がそれを阻止すべくイオンに親書を託した。
宗教上中立の立場にあるイオンに協力を要請し、平和の使者としてキムラスカへ向かっているということだ。

キムなんとかとかマルクトとか、国名はよくわからないけど、ジェイドの国と、ルークの国が戦争を始めないようにイオンが動いているってので間違いないかな?
私なりになんとなく内容を把握しようと努力をするが、基礎知識がなさ過ぎて話している内容の半分も理解できない。

話が終わったのか、ジェイドは仕事に戻って行った。
それから艦内を見るのだと言ってルークとティアも部屋を出て行き、アニスも「まってくださぁ〜いルークさまぁ〜」と可愛い声を放ちながら
ルークの後を追って出て行った。
部屋に残ったのは私とイオンだけのようだ。

「なんか、大変なことになってるみたいだね。よく状況が飲み込めてないけど。」

二人きりになり、どちらともなく椅子に腰かけると、用意してあったお茶のような飲み物を各々手にとって話し出す。

「ヒトミはこちらの事を知りませんから、無理もありません。それよりもルーク達と艦内を見て回らなくてもいいんですか?」

「うん、楽しそうだけどね。なんか一度にいろいろなことが有りすぎてちょっとね、休憩がしたいなと思って」

それから、お茶をすすりながらこっちの世界の事をいろいろ話してもらった。
オールドラントの成り立ちから、スコアの存在、両国の現状含めて。
いつ元の世界に帰れるかわからないし、ルークの家で働かせてもらう事にはなったが、いつ一人暮らしを始めることになるかも知れない。
少しでもこっちの世界の事を知っていたほうがいいと思って、話をしてもらったのだ。

「でもさ、その…予言?そんな事って本当にありえるの?」

「はい。それが星の記憶。この星の運命なのです。」

「でも、人の気持ちなんてその人の物でしょう?例えばいくら予言が右って言っても、私が必ず右と思うとは限らないじゃない!」

「そうですね。気持ちはその人のものです。僕もそう思いますが、予言は今まで外れたことがありません。それも事実なんですよ。」

それもなんか理不尽な話だなーと思う。
イオンに話してもらったおかげで大まかな事は分かった。
理解しがたいこともあったが、まぁ国が違えば考え方も変わる。それが世界なんだからもっとだろうよ。

「ありがとうね、なんとなく分かってきた気がする。よかったら分からないことが出てきたらまた教えて!」

「僕でよろしければいつでも。」

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