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「では貴女は、異世界からこのオールドランとに来た。ということでしょうか。」
シーンと静まった部屋の中、説明を終えた私にジェイドは確認を要求した。
黙って頷くと、彼は信じられない気持ちを隠そうともせずに顔にだす。
確かに信じられないのは分かるが、何もそんな顔をしなくても…と、内心思った。
感じ悪いのー。
「ジェイド、僕がヒトミの世界に行ったことも含めて、今彼女が言ったことはすべて本当の事です。」
そんな私を察してかイオンが口を開くと、黙って話を聞いていたアニスが「もしかして…」と呟いた。
ジェイドが話せと言わんばかりの視線をおくり、アニスがそれに答えるように話しだす。
「ちょっと前にイオン様が森の中でいきなり居なくなったことがあったんです。私の後ろを歩いていたはずなのにフッって!消えたみたいに居なくなっちゃったんですよぅ!それからずっと探しても見当たらなかったのに、次の日いなくなった森からヒョコっと帰ってきたんです。しかも変わった服を着て!その時はイオン様、迷ったっておっしゃってましたけど…」
「はい、その時です。僕がヒトミの世界に行っていたのは。」
そう言えば、初めて会った時森を歩いていたって言ってたっけ。
街の明かりを見て、こんなに光はなかったとか何とか。
そうそう、武器を持たずに森に入る人はいないとか言われて戸惑ったなー
武器って!みたいな。
でもオールドラントに飛ばされて、武器がない事の怖さは身にしみて分かった。
確かに、剣の一つでも持ってないと安心して闊歩出来ない所よね。
こっちの世界って。
「そっか、帰り着いた先に護衛役の人がいてよかったね!あんな魔物がいっぱいいるところに一人だと危ないし。イオン、戦う道具持ってなかったもんね!」
なんだか懐かしくなって、ジェイドの視線も忘れてイオンと話しだす。
こっちにきて、自分が知っていた山がどれだけ小さかったのかとか、武器がないと歩けないと言ったイオンの気持ちがやっとわかっただとか。
ついつい話し込んでいると、アニスが「イオン様〜〜!」と現実に引き戻した。
あ、そうだった。
今はジェイドに説明をしてるんだったね。
って、あれ?なんかこのアニスって子の声、やっぱりどこかで聞いたことある…。
どこだったか、最近のことだったと思うのだけども。。。
「あ!思い出した!この声!!」
考え込む様にうつむいていた私がはじけるように顔をあげて叫んだもんだから、
私の様子をうかがっていた皆がびっくりしたように目を丸くしていた。
が、そんなことはどうでもいい!
思い出した、この、あまったる〜く、イオンを呼ぶ可愛い声!
「アニス、あなたがあの時イオンを呼んでたんだ!!ほら、イオン、覚えてない?イオンが帰る少し前、誰かがイオンを呼ぶ声がするって言ったの。」
「確かに、そんなことを言っていましたね。」
「うん、初めてアニスの声を聞いたときどっかで聞いたことあると思ってたんだよ。」
そっかー、と、一人納得。
あの時、アニスのイオンを呼ぶ声に反応するかのようにイオンは消えた。
と言うことは私も誰かが私を強く呼んでくれたら…
そんな声が聞こえたら…
その時は家に帰ることができるのだろうか。
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