タルタロス

「ご主人様、これからよろしくお願いするですの〜〜」

チーグルの長へ報告に行ったところ、ミュウがルークについてくることになった。
理由は先ほどのライガ戦。
吹き飛ばされたミュウをルークが助けたことで、恩返しのために使える事になったようだ。
チーグルは貰った恩を忘れない生き物なんだとか。
当のルークは嫌がっているが、家の人のお土産にするんだって。聖獣とかでありがたいらしいから。

報告が終わってひと段落ついたので、とりあえず森を出ようということで皆で歩き出した。
ミュウがふわふわと宙を舞いながらルークにくっつく姿が何ともほほえましい。

「そう言えばずっと気になっていたんだけど、そこのメガネのお兄さんはどちら様?」

ようやく世間話ができるほど落ち着いたので、ずっと疑問だった事を口にした。
お兄さんは、おや、という顔をして私を見、自己紹介が遅れて申し訳ないと名前を名乗る。
私は名前が聞きたかったんじゃなくて何者かが知りたかったのだが、なんだか話しかけるなオーラというか…
それ以上質問は受け付けないという雰囲気で私はそれ以上何もきけなくなった。
場の雰囲気が悪くなり、何か話題を…
と思っていたら、イオンがジェイドと名乗ったその人へおずおずと話しかけた。

「ジェイド…すみません。勝手な事をしました。チーグルは始祖ユリアとともにローレライ教団の礎です。彼らの不始末は僕が責任を負わなくてはと…」

「そのために能力を使いましたね...医者から止められていたでしょう。しかも民間人を巻き込んだ。」

見ているこっちが可愛そうになるくらい申し訳なさそうに言うイオンに、ジェイドはため息を吐きかける。
その行為に余計に縮こまるイオン。
だが、態度とは逆ににジェイドの台詞はイオンを心配しているように聞こえた。
(心配して怒ってるんだな。さっきの話しかけるなオーラは怒ってたからなのか。)
ジェイドって言う人、いい人かも。
私がそう思いながら二人のやり取りを見ていると、ルークがイオンに助け船を出した。

「おいオッサン、謝ってんだろそいつ。グチグチ言ってねーで許してやれよ。」

あら意外…
と思ったのは私だけではなかったみたいで、ジェイドと言う人は口に出して「愚痴るかと思ったのに」と言っているし、ティアもびっくりした様な顔をしてルークを見ていた


その横でとてもうれしそうにするイオン。
イオンは先にいくルークを追いかけてお礼を言っていた。
うーん、なんかこの二人の会話って癒されるなー。イオンの前だと割とルークが素直に見える。ティアの前だと喧嘩ばっかりだからかな。

そうこうしているうちに森の入口まで戻ってきていて、さて、これからどうしようかと考える。
村に戻って泥棒の濡れ衣を晴らすのだろうと思っていたのだが、当のルークはどうでもよくなっているみたいだ。
まぁ、チーグルやライガなど、村の人たちに説明が面倒くさい事になったのは確かだし、いろいろあって怒っていたことなどどうでもよくなる気持ちは分からないでもない。
もういっそのこと村に帰らずにカイツールの検問所を目指そうか。

などと考えていると、遠くのほうからイオンを呼ぶ声が聞こえてきた。
ん?この声…どっかで聞いたことがあるような。。。

「イオン様ー!!大佐ー。お帰りなさ〜い!」

両手をブンブンと振って叫んでいたのは、ツインテールの可愛い女の子。
その女の子を見たとたん、イオンがホッと胸をなでおろしたのが見えた。
そんなイオンを見て、なんだかモヤっと言う気持ちが生まれる。

ん?あれ、あたしなんで今モヤっとした??
自分の中に生まれた変な感情。
なんだろうと考えるが答は出ずに頭に疑問符を浮かべていると、ツインテールの可愛い少女が私の前まで来た。
いや、私の前ではなく正確にはイオンの隣に。

「彼女はアニス、僕の導師守護役です。」


イオンが紹介すると、アニスと言われた女の子はにっこりと人が好きそうな顔をして微笑んだ。
そのフォーなんたらってなに?とティアに聞くと、護衛役みたいなものだと教えてくれる。
そっか、護衛役なんだ。
なんだか私よりも年齢が低そうなのに…すごいなー。
オールドラントの人って何歳から働けるんだろう。

「御苦労さまでしたアニス。タルタロスはー?」

「ちゃんと森の前にきてますよぅ!大佐が大急ぎでって言うから特急でがんばっちゃいましたぁ!」

アニスという少女が言うが早いか、ガシャンガシャンという甲冑の音とともに、沢山の兵士らしき人たちに囲まれた。
そして、いままで一緒に歩いていたジェイドがいきなりこちらに向きかえり、メガネを光らす。
なにが起こっているのか分からないままイオンを見ると、彼も何が起こっているのか分からない表情を浮かべていた。
ティアが急いで戦闘態勢に入るが、兵士は槍のようなものを近づけて私たちに向けている。
特に私は丸腰だからか、槍が首元まで伸びていて、動こうなら刺すぞな勢いだ。
それをみたティアは兵士を睨みつけながら戦闘態勢を解いた。

「正体不明の第七音素を放出していたのはあなたたちですね。あなたたち3人を拘束します。」

後ろ手首を縛られながらルークが抗議をするが、ジェイドにやめさせる気配はない。
何が起こっているのか分からずイオンに助けを求めるが、当のイオンもわけが分からずに戸惑っている。
私に近づいて縄をほどこうとするが、兵士に邪魔されてしまいには近づけさせてもらえなくなった。

「ジェイド!3人に乱暴な事はしないでください!」

「ご安心くださいイオン様。なにも殺そうと言うわけじゃありませんよ。三人が抵抗しなければのはなしですけどね。」

それは…
抵抗すれば殺すって意味じゃ…

「連行せよ!!」

ジェイドの命令で兵士たちが敬礼し、私たちはタルタロスと呼ばれた乗り物へと連行されていった。

|
Index / IonTop
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -