「ん…わぁ!!」

顔がくすぐったくて目をあけると、目の前にはライガの大きな顔があった。
びっくりして叫び声をあげたが、私の声にもライガは動じず、大きな舌で私の顔を舐めてくる。

そうか。
顔がくすぐったかったのはライガが舐めていたからか…

ん?
ライガがなんで私の顔を舐めているんだ!!!

再びびっくりして起き上がると、私の顔を舐めていたライガはその行為をやめ、今度は自分の顔を私の体へと擦りつけてきた。
これがまた顔を舐められるよりも断然くすぐったくて、声をあげて笑ってしまう。

「あははは、くすぐったいよライガ、ちょ、やめてったら!!」

笑いながら、なぜこんな展開になったのか考えていたら、ライガをかばって攻撃を受けた事を思い出した。
メガネをかけた青年の、なんだかすごい譜術。
思わずライガをかばって飛び出したはいいが、私の小さな体で大きなライガをかばえるわけもなく、攻撃魔法が直撃した。
と、思うのだが、私はどうやら生きているらしい。
あの魔法ははったりだったのだろうか。

ライガに顔を擦り寄せられながら、体に異常がない事を確認する。
目立った怪我もなければどこか打った様子も見当たらないから、あれは攻撃ではなく目眩ましか何かだったのかもしれない。

「なんだ、飛び出すことなかったんじゃんね、よかったーライガが怪我しなくて。わはは、だから顔をすり寄せるのやめてったら!!」

なんだろう、なんだかよく分からないけど、どうやら私はライガに気に入ってもらえたらしい。
てことは、これでライガを殺すことなく、彼女らに場所の移動を頼める…ということか?
早速ミュウに通訳をお願いしよう!
と、皆のほうへ振り返ると、全員が少し離れた場所に突っ立ったままボーっとこっちを見ていた。

「みんな、そんなところで何してるの?」

「いや、だって…なあ?」

私を指差して変な顔をするルーク、ティアが視線を動かさずに「ええ、」とうなずいた。

「ヒトミ、か、体は平気なんですか?どこか怪我でも…」

イオンが一歩こちらへと歩みより、おずおずと聞いてくる。
が、平気かといわれてもさっき確認したとおり体はなんともないわけで。

「私のインディグネーションをまともに浴びて無傷とは…ライガにも傷一つ付いていない…これはいったい…」

メガネの青年も信じられないものをみたような態度を取る。
なんで?なんかみんなの反応おかしくない?

「え、どうしたの?私はなんともないけど…だってさっきの譜術って目くらましかなにかでしょう?私もライガも傷一つ付いてないし。」

答えると、ますます不思議そうな顔をする一同。
いや、一番何が起こっているかわからないのは私ですけど!!

「なんだかよくわかんないけど、ミュウ!ライガとお話したいから通訳お願いできる?」

「みゅ、わ、分かりましたですの!!」

私の元へとやってきたミュウにお願いしてライガと交渉することに成功した。
ライガはコクリとうなずいて、この場を去ることを約束してくれる。
卵を運ぶのを手伝おうか?
と提案したが、いくらなついてくれたといってもそれはそれ。
大事な子供を人に預けることは出来ないらしく遠慮されてしまった。
日が暮れたら異動すると約束をとりつけたので、私達は一旦チーグルの長へ報告する為にその場を後にすることにした。

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