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ドンっと言う音とともにライガめがけて術が発動した。
ライガを庇うようにしてへばりついた私にも、もちろん攻撃魔法は働いている。
光が私とライガを包み、魔力で起こった風力と閃光が周りの人間の視力と動きを奪った。
「ヒトミーーーーーーーーーー!!」
「きゃあああ!」
イオンが私を呼ぶ声とティアの悲鳴が聞こえる。
それから他にも...
耳…というよりも頭の奥のほうで鳴り響く声。
この声は…夢に出てきたブロンドの髪の女性・・・?
異世界の少女、貴方の力は無。
すべての力を無に還し、その力は理すらをも超越する。
どうかその力で終わらせて。
すべてを。
ヒトミたちを覆っていた光が消え、そこには横たわるライガとヒトミ。
奪われていた視力が完全に戻ったイオンたちは、急いで彼女の元へと駆け出した。
「ヒトミ!!」
名前を呼びながら近づくと、顔は青白く、生気のかけらも見当たらないヒトミの姿。
その光景に嫌な予感がぬぐえず、イオンは横たわる少女の傍に座り恐る恐る頬に触れた。
ピクリともせず、名前を呼んでも反応はないそのぐったりしている様子が、嫌な予感を強くさせる。
「そんな…。ヒトミ・・・」
瞳に涙をためたティアがヒトミに触れようとしたとき、隣で魔物のうめく声が聞こえた。
一同はっとして視線を向けると、横たわっていたライガがゆっくりと立ち上がっている。
「まさか!!」
「攻撃が効いてない!!?」
青年の奥義が直撃し、倒したはずではなかったのか。
再度戦闘態勢に入ろうとするが、ヒトミが気にかかり、みんなの意識がまとまらない。
近づいてくるライガに反応できずにとっさに間をとるが、おかげでヒトミを一人残してしまう結果になってしまった。
しまったとヒトミのもとへ戻ろうとするがイオンだったが、彼女はすでに起き上ったライガの足元だ。
ティアが危険と判断し、イオンの行動を阻む。
「だめですイオン様、危険です!」
「ですがヒトミが!!」
「それでも!!あなたを危険にさらすわけにはいきません!」
再度剣を抜くルーク。
青年も戦闘態勢に入っていた。
「倒れている少女には申し訳ないが、このままだと私たちも危険です。今はライガを倒すことに集中してください。」
「でも…、」としぶるイオンを背後に回すティア。
青年はイオンが後ろに下がったことを確認すると、詠昌をするための援護をルークとティアに依頼する。
よし、と全員戦闘態勢を整えてライガへと向き直ったが、当のライガはルークたちには見ることもせず立ち尽くしていた。
「あいつ、うごかないぞ…?」
ゆっくりと立ち上がったライガは、自分の足元に倒れこんでいるヒトミをじっと見つめて動かない。
ルーク達は彼女を心配し、しかし動くこともできずにその光景を見ているしかなった。
少女になにかしたら絶対に許さない…そんな気持ちで各々息をのんで見守っている。
「キューン…」
鳴き声のような声を発し、ライガはゆっくりと少女へ顔を近づけた。
焦ったルークが剣を動かそうとしたが、青年が待ったをかける。
「なにか、様子がおかしいと思いませんか?」
「はい。いまのライガには敵意のようなものが全く感じられません。」
「僕もそう思います。ライガは…むしろヒトミを心配しているように見えるのですが。」
ティアと青年の会話に、後ろに下がらされたはずのイオンが加わる。
ルークはよくわからないといった表情で三人を見ていた
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