「う…ん...」

目をあけると、そこには困った顔のルークとティアとイオンと、そしてチーグルの…ミュウの顔があった。

「ヒトミ!!目が覚めたのね!よかった。いきなり倒れるから心配したのよ。」

そう言って私の両頬に手を当てるティア。
ああ、私確か頭が痛くなって意識が…
そのあと倒れちゃったのか。
じゃあ皆のこの顔は困った顔じゃなくて心配した顔…なのかな。

「ごめん、心配かけたみたいで…。どのくらい倒れちゃってた?」

「5分ほど…。それよりも頭痛は大丈夫なんですか?」

「うん、もうなんとも…」

なんともないよ、って言いかけて、話しかけてきたイオンを見ると、なんだか態勢がおかしいことに気がついた。
それに地面に寝ているはずなのに、なぜか頭の下がやわらかい。
地面がやわらかいはずないし!と顔を横に向けると、見覚えのある柄の服が私の頭の下にある。
それでもってその服の下には…

「ひああああああ!!!」

思わず叫んで飛び起きると、イオンが「いきなり立ち上がると体に…」
なんて言ってる。
ルークとティアは何事かとびっくりした様子だ。

「いや、だって、ちょ、ひ、ひ、ひざひざひざひざ」

「ひざひざうるせぇな!なんなんだいきなり!」

動揺のしすぎて口がまめらずに同じ言葉を繰り返すと、ルークに嫌そうにされる。
いや、でも動揺もするよ!
なんでイオンが私に膝枕なんてしてるの!?
いくら私が倒れたからって膝枕って!!
なんでそんな男のロマン的な展開なのよ!

「すみません、いきなりの事でしたからそのまま…」

「いや、イオンが謝ることじゃないでしょ!」

「だったら問題ない・・・」

問題ないでしょうというイオンの言葉にかぶせて問題あるよーと叫ぶ私。
叫んでいる途中で、ごんっという音と同時に頭に衝撃が走った。
「☆・@*。¥!!!!?」
痛さに声が出ずうずくまると、ティアとイオンの「ルーク!」という声が耳に入る。
堪忍袋の緒が切れたのだろうルークからの鉄拳だったようだ。

「だってうぜーんだよ!いきなり倒れたかと思えばこれだぜ?」

「それでも叩いていい理由にはならないでしょう!女の子の頭を叩くなんて!信じられないわっ」

例のごとく言い合いを始めた二人だったが私にはそれを止める気力は残っておらず、イオンの横に腰掛けて木の幹に寄りかかった。

「痛たた、あー痛かった。イオン、ごめん。膝枕私のためにしてくれてたのにテンパっちゃって。。しびれなかった?ありがとうね。」

「いいえ、僕は大丈夫ですよ。気にしないでください。それよりも大丈夫ですか?」

ルークに殴られた頭をさすりながら「へーきだよ」と話していると、ミュウがふわふわと浮いて私の頭をなでてくれる。
小さな手でヨチヨチとしている姿があまりにも可愛くてキューンとなった。
思わず抱き締めてミュウを苦しませる。
「苦しいですのー」
じたばたされて気づいた私はあわててミュウを解放しが、しかし苦しんでいる動作も可愛いいなぁ。

「痛いのよくなったですの?」

「よくなったよくなった!あまりの可愛さに癒されたよ。ありがとうね、ミュウ!」

いうと、嬉しそうにするミュウ。
そこでちょうど良くルークたちの喧嘩も一区切りついたようで、私達へと向き直る。

「ヒトミ!よくなったのならさっさと行くぞ!早く終わらせて俺の汚名を晴らすんだ!」

「まって!ヒトミは目が覚めたばかりなのよ?まだ無理はさせられないわ!」

「あたしならもう大丈夫だよ。迷惑をかけてごめんね、ルーク。みんな。ライガっていう魔物のところに行こうか」

立ち上がってルークの元へと駆け寄ると、言葉では急かしていたが、ルークの目は私を心配していた。
本当に大丈夫だよ。と、耳打ちすると、少し安心したような表情になる。
ほんと、ツンデレなんだからルークは!!

一同再びライガの元へと歩き出しながら、私はさっきの夢を思い出していた。



助けてと彼女は言った。

ライガと、小さい少女を。
あの夢で見た映像のように、本当にライガと戦うことになるのだろうか。
そして少女を悲しませることになるのだろうか。
その時私には何ができる?


そもそもあの夢はいったい…。


考えていても仕方がない。
まずはライガに会ってみてそれからだ。

うつむいていた顔を上げ、祠の入口に足を踏み入れた。

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