「な、なんだぁ?魔物が人間の言葉をしゃべってるぞ!どうなってんだ!!」

なにか金色に光る輪っかをもった動物の後ろに、わらわらと群れる動物たち。
あれは耳なのか?大きな二つの耳に大きな丸い目、顔より小さな体でよちよちと歩いている。
決して凶暴には見えない愛くるしい姿から、私たちの警戒心が緩んだ。
一人状況を把握していたのだろうイオンが、魔物が人間の言葉を話せるのはソーサラーリングのおかげだと説明する。

「左様。このリングはユリア・ジュエとの古の契約により与えられたものだ。」

「僕はローレライ教団の導師イオンと申します。あなたはチーグル族の長とお見受けしますが?」

「いかにも」

人間の言葉を話すチーグルはチーグル族の長で、どうやらリングの力で人間の言葉が話せるらしい。
他のチーグルたちは、周りでみゅうみゅうと鳴いている。
長だと分かると、ルークはさっそく本題へと話を移した。
チーグルの長は、食べ物を盗んだのは自分たちだと素直に認めたが、食料を盗まないと自分たちが食べられてしまう状況だったらしい。
ライガという肉食の魔物の住処で火事を起こしてしまい、定期的に食べ物を運ばないと自分たちが餌にされてしまうということだった。
食料泥棒としてチーグルを突き出せば、ライガは食料を求めてエンゲーブを襲うだろう。
だが、エンゲーブは世界中に食料を出荷している村。
その村が襲われれば世界中が困ってしまう。

少し考え込んだイオンの言葉は、

「ライガと交渉しましょう」

だった。

「魔物と…ですか?」

「ライガってのもしゃべるのかよ?」

怪訝な顔をする二人に、イオンは、チーグル族に助けを借りて通訳をしてもらいましょうと提案する。
チーグルの長は快く引き受け、火事を起こしてしまったという幼いチーグルにソーサラーリングを貸し与えてよこした。
恥ずかしそうに出てきた小さなチーグルは、ソーサラーリングの中に体を入れて話しかけてくる。

「ボクはミュウですの。よろしくお願いするですの!」

そう言ってふわっと浮いた。
すごい!ソーサラーリングって話せるようになるだけじゃなくて浮くこともできるんだ!
ふわふわと浮いて私たちの周りをくるくると回る。
しゃべり方も可愛いし、ぬいぐるみみたい!
キュンキュンしていると、横にいたティアも同じことを思っているのか頬を赤く染めてうっとりした表情でミュウを見ていた。
ティアを眺めていると彼女と眼が合って、恥ずかしかったのかフッと顔をそらされた。
だが、その背中が焦って見える。
見たらいけない物を見ちゃったのかな…ティア、ごめん。

ティアと私が萌えている横でルークはウザいとイライラしており、それが災いしてミュウに炎を吹きかけられて真っ黒焦げになっていた。

火を出すのもソーサラーリングのせいだと思いきや、チーグル族はもともと火を吐く種族のようで…
温厚にみえるのに、結構過激な魔物なんだなぁと思った。

「それではミュウ、通訳をお願いいたしますね。」

チーグル族に見送られながらライガの巣へ行くために穴を後にした。

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