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「イオン!ヒトミ!何してるんだ!?早く来いよ!!」
遠くの方でルークの呼ぶ声がする。
「ヒトミ、あの…」
イオンが何かを言おうと口を開いた時、しびれを切らして戻ってきたルークに、私はがっちりと確保されてしまった。
「ヒトミ、なにやってんだよ!早く来い!!」
腕を首にまわされて息が苦しい。
ギブアップの声が出せず、バシバシを腕をたたいて抗議するが、余計ギリギリと首がしまる。
まじ、マジで苦しいですルークさん!
「何回も呼んだのに無視しやがって!ほら、さっさと い く ぞ ! !」
やっと腕から解放されて、肺に一気に空気が流れ込む。
思いっきり咳き込み涙がでた。
ゲホゴホ言ってるとイオンが心配そうに背中をなでてくれる。
や、やさしいぜ。ルークとは大違いだ!
「ありがとうイオン、こらルーク!死ぬかと思ったじゃない!」
「んだよ、俺を無視するお前が悪いんだろ!!」
まぁ確かに私が悪かった。
だからって…だからって!!
涙目になってイオンを見る。
自然と視線が合って二人して苦笑った。
早くチーグルをどうにかしないとだね。
「あ、そう言えばイオン、さっきは何を言いかけてたの?」
ルークの所為で言いかけた言葉が聞けなかったことを思い出し、イオンに聞いてみたけれど、もういいんです。と、首を横に振られてしまった。
私が気になるんだけど、いいって言うのを無理やり聞き出すのもどうかと思ったので了解する。
「しゃべってねーでさっさと行くぞ!ただでさえ見失って遅れを取ってんだからな!ほら!早くしろよ!!」
そう言って無理やり手を引っ張るルーク。
あーもう、分かったから!
手を離してと抗議するが、ダメだと拒否されて早歩きでティアの元へと急ぐ。
イオンはそんな私たちに一歩送れるようについてきていた。
だから、ぼそっと呟いたイオンの声は私に届くことなく宙に消えてしまった。
嬉しそうに呟いた、その言葉が。
「ヒトミの言葉がすごく嬉しかったんです。嬉しかったんですよ。」
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