にしてもちょっと驚いたな。
偉い人なんじゃないかな、とは思ったけどまさか本当に偉い人だったなんて!!

「そういえばルークも良いとろこのお坊ちゃんなんだよね?なんかやっぱりすごい人なの?」

「あー?あー、母上がな。国王の妹だから偉いんじゃねーの?」

「こ、こく、国王!!?」

よ、予想を上回る回答!
坊ちゃんとは思ったけどまさか国王来るとは思わなかった!!
あ、でも国王の妹だから、、、公爵とか子爵とか伯爵とかそこら辺?
爵位とかよく分からないけど!

「じゃ、じゃーこれから私はルークの事をルーク様と呼ばなければいけないのかしら〜」

「…お前、さっきの俺の話を聞いてなかったのかよ!!」

もちろん冗談で言ったのだが。
そんな話をしていると、遅れていたイオンとティアがやってきた。
初めは遅れてきた二人を責めていたルークだったが、チーグルを追うのが優先と思ったのだろう。
文句もそこそこに、立ち上がって移動を始めた。


・・・なんか自分から聞いておいてなんだけど…聞いてよかったのだろうか。
身分とかって隠したりするもん…だったりするよね?特に高い身分をもつと命狙われたりとかあるって聞くし。
もっとちゃんと話をしたいような気がするが、ルークの意識はもうチーグルへと移っているし、改めて話を振るのもはばかられた。

「ヒトミ?どうかしたのですか?」

「あ、イオン。うん、ちょっと考え事・・・かな?」

「そうですか。僕でよろしければ相談にのりますよ」

「ううん。大丈夫。気にしないで!」

答えると、イオンはなんだか淋しそうな顔をして「そうですか」とほほ笑んだ。

・・・なんでそこで淋しそうな顔?

「イオン?」

「いえ、僕ではヒトミのお役に立てないのかと思うと…自分が不甲斐ないですね」

「え!!?ち、違うよ!!?イオンがとかじゃないよ!」

イオンが役に立たないとかそんなこと思ったこともない。
むしろ彼の存在がどれだけ私の気持ちを救ってくれたかわからないほどだ。

「ご、ごめんね。えっと…ルークからイオンのその…教団とかいうところでの立場とか聞いちゃって。聞いてよかったのかなって、申し訳なく思って」

「ああ、そう…でしたか。申し訳なく思うことはありませんよ。」

でも、と口にするが「隠していないから気にしなくてもいいのですよ」と言ってくれる。
だが、なんだか表情が堅い…気がするのは私だけだろうか。

「確かに僕はローレライ教団で指導者の立場にありますが、僕自身が偉いわけではなくその立場にあるという、ただそれだけです。」

それ以上踏みいってくれるなと言わんばかりの表情。
泣きそうに見えるのは私の思い違いだろうか。

「さぁ、二人に置いていかれてしまいます。行きましょうか。」

そう言ってルークを追うために私に背を向る。
ゆっくりと歩き出す彼を、このまま行かせてはダメだと思った。
なぜだかわかんないけど。

「待ってイオン!!私はこの世界のことわからないし、その教団のことも分からない、でも、イオンがすごく素敵で優しくて一緒にいるだけで心が安らぐ、そんな人だって知ってるよ!」

付き合いが浅い私だって知ってるんだもん、イオンの周りのみんなだって知ってるよ!
たまたまその立場にいるような言い方をしたけど、そんなことは絶対ない。
みんな、イオンが好きだからついて行くんだ。
そうじゃなかったらとっくに離れてるよ。
私だったら使えたくない人の下になんて居たくないもん!

「ヒトミ…。」

「なにがあったのか知らないけど、そんな悲しい顔をするのはやめて!私でよければ相談に乗るし!それに、イオンにそんな顔をさせるヤツ、私がぶん殴ってやる!!」

「…。」

「イオン?」

イオンは、熱弁しすぎて肩で息をする私を固まったように凝視している。
あれ、もしかして引かれてる?引かれてる!!?
なんかキモイ人になってた!!?
いや、これはイオンが好きなあまり…ね。
あ、そこがキモイ要因なのか!!?

沈黙するイオンの前で、キモがられたと思ってぐるぐるしていたら、クスクス、と笑う声が聞こえてきた。
不思議に思って声のする方を見ると、さっきまで固まっていたイオンが笑いだしてるではありませんか!!

「あり?イオン…さん?」

「あははは、すみません。ヒトミの表情が面白かったのでつい。」

ついって!!
引かれたと思って凹んでた顔を面白いって!!
なんか余計凹んできた。

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