私の話が終わり、ひと段落したからかイオンが口を開いた。

「ところで、あなた方はなぜこのような場所に?たしか昨日エンゲーブにいらした方々ですよね?」

どうやら昨日、この三人は面識があったみたいで…
そうよね、自分の事にいっぱいっぱいで周りを見る余裕がなかったけど、ティアとかずっとイオンのことをイオン様って呼んでたっけ…
ん?様?様付けするって…実はイオンって偉い人なのかな???

「申し訳ありません。自己紹介が遅れました。彼はルーク、私は神託の盾騎士団、大詠師モース旗下、情報部第一小隊所属、ティア・グランツ響長であります。」

「ああ、あなたがヴァンの妹ですね!うわさは聞いてます。お会いするのは初めてですね」

「はぁ!!?お前が師匠の妹!?それに神託の盾の人間?じゃあ何で師匠の命を狙うんだよ!!」

…また始まったよ二人の喧嘩が。
正直分からない単語だらけで喧嘩の原因とか全くわかんないんだけどね。
今のティアの台詞のどこに怒るポイントがあったのかさえわかんないんだもん。
イオンなら分かるかな?

「二人とも、喧嘩はそれくらいにしよう?今はチーグルを見つけるのがさ・・・ねぇ、なんかこっちをずっと見てる可愛い動物がいるんだけど、アレ何かな?」

二人をなだめようと間に入ると、視界の端に小さな動物が入った。
ちっこくて耳が大きくて、あれってなんていう動物なのかな?
ウサギ?

「あ、あれは…チーグルです!」

「なにー!!!!あ、逃げた!くそっ追うぞ!!」

「えぇぇぇぇ!ちょ、待ってよルーク!今喧嘩してたのに変わり身早すぎでしょー!」

急いでかけていくルークを追いかけるが、イオンとティアがついてくる気配がない。
横目で二人を見ると何か話している風だった。
気にはなったが、今は独走しているルークを追いかけないとこんな森では迷子になりかねない。
まぁ、私がついていってもどうなるわけではないのだが、一人より二人の方が心強いじゃない?

「くそっ、見失ったか…」

「わっちょ、バカ!ルーク!!」

ルークがチーグルを探して草むらの中に入ろうとしていたので、その行為を急いで止めた。
だってあんまり動きまわると二人とはぐれる可能性が高くなるじゃない!
こんな森の中で迷子は絶対いやだもん!
一瞬嫌そうな顔をしたルークだったが、彼も迷子は困ると思ったのか、舌打ちをしてからその場に座り込んだ。
私もそれを倣うように彼の隣へ腰を下ろす。

「ねぇルーク、ちょっと聴いてもいい?」

「あん?いいぜ?なんだよ」

「さっきティアがすごく長い自己紹介してたじゃない?何たら騎士団だの部隊だの小隊だのって、すごくかしこまってたし、イオンのことずっとイオン様って呼んでるみたいだったし。ねぇ、イオンってもしかして偉い人?」

そういえば私の世界にいたとき戦争を止めるとか言ってた。
その時は物語の中を覗き見するような感覚で聞いていたけど、でもよく考えればそういうのって組織で動いたりするじゃない?
人一人で戦争を止めるだなんてとてもじゃないけど途方もない話だ。
もしそのような組織があるのだとしたら、ティアの態度を見ると、イオンはその中で地位のある人のように感じた。

「あぁ、俺もよく知らないけど、教団の最高指導者とか聞いたな。最高っつーんだから、教団で一番偉い人なんじゃねーの?」

「さ、最高指導者…」

最高指導者って…もしかしなくても偉いんだよね!!?
イオンって私と同じくらいに見えたのに、実は結構歳とってるのかな…
じゃなくて!
私そんな偉い人にずっとタメ口だったんだけど良かったのかな!!?
あのティアがずっと敬語を使ってるんだよ!!

「あ?別にいいんじゃないか?お前とあいつ、仲いいんだろ。」

「え、うん。友達だもん、仲はいいつもりだよ」

「だったらかしこまった言葉使いはやめとけ。俺もガイに敬語を使われたら…イヤだしな。」

「?。ガイって誰?」

「俺の家の使用人。俺が小さいころから一緒に居るヤツ。」

そっか。ルークはその人と友達なんだ。
うん、でもそうだよね。友達に敬語使われたらそりゃ嫌だよね。
私そんなことも気付かないで…
イオンと出会って、自分の無神経なところを直そうと努力してきた。
でも、あんまり良くなってないな。
ああああ本当に私って無神経!
凹むわぁ

「ありがとうルーク!」

「は?なにがだよ。」

「ううん。ただお礼が言いたかっただけー」

「?わけわかんねー」

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