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「初めはイオン様がヒトミ世界の世界に行って、今度はヒトミがこちらの世界に来た…ということ?」
「うん。そうなの。正直音素とかよくわかってないし、魔物も譜術?も初めて見た。」
話終わると、二人は困ったような顔をして私を見ていた。
それはそうだ。
いきなり異世界から来たーなんていわれて、そうなんですか〜なんて軽くいえるわけがない。
と、思っていたんだけど。
「ふーん。だからお前、そんな変な格好してんだ?」
「私も、変わった服だし、発言が変わっている…とは思っていたけれど、そういう訳があったのね…」
「やっぱり服装おかしいと思ってたのね…って!! 思うところは其処なわけ!?他にもっとあるでしょう?嘘言ってんじゃねーよ的な!異世界とかあるわけないだろとか!」
「嘘なの?」
「いや、本当のことだけど…」
「じゃぁなんだよ、疑って欲しかったっつーんじゃねーよな?」
「そ、それも違うけど…」
だったらごちゃごちゃ言ってんじゃねーとルークにたしなめられた。
異世界から来た。
そんなありえないだろう話をしたというのに、疑いもせずに接してくれる。
自分でも信じられない事だけに絶対否定されると思っていたから、二人が受け止めてくてたことに動揺してしまった。
あたふたしていると、私たちの様子を見ていたイオンに「良い方たちと巡り合えましたね」と言われた。
その言葉に私は大きくうなずいて二人を見る。
音素がないってどんな感じなんだろうなって話をする彼らを、心から好きだと思った。
嬉しいなぁって、そうつぶやいた私の顔を、イオンがしゃがんで覗き込んできた。
あの、すごく顔が近いんですが…。
「イ、イオン?」
びっくりして一歩下がってしまった私の両手を取って、イオンが自分の胸の辺りへと持っていく。
「僕も、同じ気持ちでしたよ。」
何のことか分からずに首をかしげると、イオンはいつの間にか言い合いに発展しているルーク達を見てにっこりと微笑んだ。
「突然異世界に飛ばされて、怪しく見えても仕方ない僕をヒトミは疑わずに親切にしてくださいました。僕もすごく嬉しかったです。」
私に向き直って、そう言ったイオンの笑顔はなんだかいつもよりも綺麗に見える。
手なんか握られちゃってるし、嬉しい反面なんだか恥ずかしいな。
その言葉にどう返せばいいのか悩んでいると、ルークが「何見つめ合って手握り合ってんの?」って言って来て…。
むしろ私が知りたいです。
「あの、イオン?そろそろ手を離してもらってもいいかな?」
「あ、す、すみません。」
イオンが顔を赤らめながら手を離すもんだから、こっちも余計に恥ずかしくなった。
な、なんなの、この付き合いたてのような恥ずかしい空気は!
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