激しく泣いて数分後。
ようやく落ち着いてきてはっとなった。

あ、あたし、イオンの胸に抱かれてる!!

我に返ったのはいいものの、この状況、どうすればいいんでしょうか!
恥ずかしすぎて顔が上げれない・・・いや、しかしかと言っていつまで経っても抱きついているわけにもいかないし!!

「落ち着きましたか?」

どうしようか迷っていると、イオンが気をきかせて話しかけてきてくれた。
イオンからゆっくり体を離すと、今までくっついていた部分が外気に触れてヒンヤリとする。
よっぽど長い間密着していたみたいだ。

「う、うん。ごめんね、とりみだしちゃって...」

「いえ、いいんですよ。先ほど僕も支えていただいたのでお相子です。ヒトミにはまた支えてもらってしまいましたね。」

「そう言えば!イオンと初めて会った日も支えてあげたね。」

フフフ、と笑うイオンは、私の知っているその人で。
心の片隅に残っていた不安な気持ちが解けていくのを感じた。

「それにしても、あなたがなぜオールドラントに?もしかして僕と一緒にこちらに来てしまっていたのですか?」

「ううん、違う。私にもなぜだか分からないんだ。イオンが帰ってからしばらく後に、イオンのローブを持って山に行ったの。そしたらローブから光が出て...気付いたらこっちに来てたの。」

まるでイオンと同じような状況で世界を跨いでしまった。
ルーク達と旅をしながらも、なぜこの世界へと来てしまったのか理由を考えていたのだがさっぱり思いつかない。
ローブが光ったところを見ると、あのローブに理由があるような気がするのだが、イオンが帰ってしまったあの日、彼は私の服を着ていた。
と言うことはローブが問題と言うわけでも無いのではないだろうか。
なんて、私の足りない頭で考えても理由なんか思い浮かぶわけなく、私の考えが当たっていたとしても、答えを知っている人がいないのだから正解かすら分からない。

「とろこで、そちらのお二人は昨日の…」

イオンの視線をたどって後ろを振り向くと、すごい形相で私をにらむティア・ルークと目が合った。
あ・・・しまった。
ごめん、正直、イオンに会えたのが嬉しすぎて二人の存在を忘れていたよ。

「よくも今まで俺達を無視しやがったな!向こうの世界ってなんなんだ!それに…あんなに泣…くそっ、なんなんだよ、びっくりするだろ!」

「そうよ!イオン様とあなたが家に帰れないことはなにか関係があるの?…あ、言いたくないようならいいの。ただ…」


「ルーク…ティア…」

始めこそ無視されていたことを怒るそぶりを見せていたが、二人とも、私のことを心配してくれてるんだってのがすごく伝わってきた。


二人なら、私が異世界から来たって言っても真剣に聞いてくれるだろう。
彼らと本当に向き合うためにも、きちんと話してた方が…。

うん。
と、うなずいて、イオンとの出会いから二人に話すことを決意した。

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