再会

次の日、朝日が上がる少し前に目が覚めた。
「がははは、よーく寝ていたなぁ」
知らないおじさんに笑われて起き上がると、昨日夜空を見上げた石の上にいて...
(や、やっちゃった…あたしあのまま寝ちゃったんだ!)
すみません、と、おじさんを見るとどうやら農家の方らしく、すでに多くの人が畑に出て仕事をしていた。
農家の方の朝は早いと言うけれど、本当に早いんだなぁと感心する。

「気にしなくていーよ。お嬢ちゃんみたいにそこで寝ちまうやつ結構いるからな」

苦笑いしておじさんに手を振り宿へと戻ると、二人がちょうど起きたところだったらしい。

「おはようヒトミ、あら、今帰ったの?」

「あ、いや、あははは」

とりあえず笑ってごまかした。






ルークに急かされて、朝食もそこそこに出発した。

「うわー、でっけー森。」

昼間だというのに、木々が多い茂っていて薄暗い。
ギャアギャアと獣の鳴く声が森にこだまして、薄暗い森がいっそう不気味に見えていた。
不気味なものとかがあまり得意でない私は、ティアの後ろにぴったりくっついて辺りをキョロキョロを見回す。
おかげでルークが一人カツカツと先を行き、ティアと私は少し遅れ気味だ。

「ルーク、あんまり急いでいかないで。はぐれてしまうわ。」

「ごめんルーク、ちょ、足速すぎ!待ってよー」

言うと、チっと舌打ちをされ文句を言われたが、私の足のペースに合わせてくれ始めた。

うん。
やさしーよね、ルークって!
なんたってツンデレだもんね!

嬉しくてフフ、と笑みを浮かべる。

「なに笑ってんだ。変なヤツ。」

「ん?なんでもなーい!それより、ずい分歩いて来たけどチーグルらしい動物見当たらないね。」

「そうね、森の奥に住んでいると聞くけど…。」

「ウゼー、どうでもいいじゃねーか。出てこないなら出るまで進むだけだ!」


こんな大きな森で野生の動物なんて捕まえれるはずもない、と、ティアに言われながらもら我が道を行くルーク。
私は寝ていてどんな状況だったのか分からないが、泥棒に間違えられたのがよっぽど悔しかったんだろうなと思う。
まぁ、普通間違えられたらいい気はしないよね。
そのまま特に何を見つけることもなく3人でどんどん進んでいたのだが、突然前方から唸る獣の声が聞こえてきた。

「おい!あいつ、昨日の・・・?」

先に駆け足で見に行ったルークが指差す方向を釣られるがまま見やると、人が一人、魔物の群れに囲まれて戦っていた。

「あぶない!」

ティアが叫ぶのと同時に、魔物に囲まれていた人物の右手が光かって陣のようなものが浮かび上がった。
陣は強い光を発して、周りを囲んでいた魔物が一瞬にして消え去る。
すごい…
あんなにいっぱい居た魔物が一瞬で…
そう感心したのもつかの間、魔物を倒した本人がふら付くのが見えた。

(倒れる!!)

そう思うより先に身体が動き、倒れ掛かった身体を支える。
私より1テンポ遅れてティアとルークがかけてきた。

「大丈夫ですか!!?」

「あ、はい、大丈夫です。少しダアト式譜術を使いすぎただけ…で…。あ、あなた…は…」

苦しそうにうつむいていたが、私の問い掛けに顔を上げ、ばっちりと目が合う。
目が合って、息が止まった。
だって、この人は…
ほんの1ヶ月前、突然私の前に現れた少年。
こちらの世界に来ても、いつも思い描いていた…

「ま、...まさか、イオン!!?」

「その声…やはり…ヒトミ…ですか!?」

「やっぱり、やっぱりイオンなんだ…!!」

目の前に彼がいることがにわか信じられなくて、軽く自分のほっぺたをつまんでみた。
だが、正直痛くない。
力いっぱいつまんだが、よく分からない。
仕方が無いので横に居たルークの髪を思いっきり引っ張ってみた。

「いててて、痛っ、痛っ、痛てーっつーの!何しやがる!!」

「痛いの?じゃあやっぱり夢じゃないんだ!イオン、本当にイオンなんだ!!」

痛がるルークを無視してイオンに話しかけると、「お前なー!」と怒り爆発気味のルークの声が聞こえた気がしたが、私的にはそれどころではない。

どうしよう、なんか嬉しいのか悲しいのかわけの分からない感情があふれてくる。
気付いたら自然に涙が出てきて止まらなくなった。
気持ちがぐしゃぐしゃになって、よく分からない。
ついには声に出して泣き始めた私に、ティアもルークもびっくりしてどうしていいのか分からない様子で絶句していた。
唯一イオンだけが、何も言わずに頭を撫でてくれた。

「怖かったでしょう。大変でしたね。」

そう言われて初めて気付いた。私は怖かったんだ。
何も知らないところに飛ばされて、神経張り詰めて、両親の保護にあってぬくぬく育ってきた私には、酷だった。
私を知ってくれているイオンに出会えた事で気がゆるんだのだろう。

「イオン、会いたかったっ!」

抱きつくと、そのまま胸を貸してくれた。
私が落ち着くまでずっと。

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