「これが…村」

日本では考えられない「村」がそこにはあった。
そこはかとなく中世ヨーロッパな香りがする。
村の外からでも市場の声が聞こえ、活気のある村だというのが分かった。

ティアは、家に帰れないと言った私に「どこか安全な村に付くまで、貴方をお守りします。」と言っていたのだから、この村が安全な村であるなら私の旅はとりあえず終了になる。
本音をいうと、二人と一緒に居ることに居心地のよさを感じ始めていたので離れたくない。
一人は不安だし一緒に居させて欲しいな。
と、思っているのだが、そうはいかないだろう。

「あの、二人とも!」

呼ぶと、先に村に入ろうとしていた二人が振り返る。
勇気をだしてお別れを言おう。
ぎゅっと目をつぶり、意を決して言葉にした。

「ここまで守ってくれてありがとう。約束は安全な村までだったよね。無事に村にたどり着いたから…」

お別れだよね。
お世話になりました!

精一杯笑顔を作って言った。
・・・。
のだが、二人からの反応がない。
あ、あれ?
おかしいな、と思って閉じていた目を開いて二人に向けると、なんか複雑そうな顔をして見詰め合っていた。

「あーーー、お前、行くとこ無いって言ってたか?」

「え、あ、うん」

「じゃぁ、俺の家で働くか?父上に言って一人くらいならメイド増やしてもらえると思うし」

「え?それってどういう…」

言ってる意味がよく分からずにキョトンとしていると、ルークの言葉をフォローするようにティアが口を開いた。

「確かに私は安全な村まで、と言ったわ。でも関わった以上、貴方を知り合いも居ない村に置いてなんていけないし…ルークの家なら安全は保障されてるから私としても安心だもの。」

「ま、お前が嫌だってんなら別にいーけどな」

それってルークの家で働くってことだよね?
って事はまだ二人と居れる?
どんなところかも分からないところに一人でいなくていいってこと?

「嫌なんて!で、でも…いいの?」

「あーウッゼーな!俺がいいって言ってんだからいいんだよ!」

そんな棚からぼた餅な展開はありなのかしら!!
少し顔を赤くして頭を掻きながら目をそらすルークが神様天使様に見えた!

「嬉しい!ありがとうルーク、ティア!!」

あまりに嬉しくて、思わずルークに抱きつくが、真っ赤なった彼に「やめろよ!」といって引き剥がされた。
ルークの後にティアにも抱きついたが、同様に顔を赤くした彼女はすごく可愛かった。
ティ、ティアかわいすぎる!


話がひと段落したところで、ルークが村を探検しようと提案してきた。
だが、安心したからかどっと疲れが押し寄せてきて、正直足を休めたい。
なれないローファーで動き回ったせいもあるのだろう。
申し訳ないと思いながらルークの提案には遠慮させてもらって、先に宿屋で休むことにし、市場に繰り出す二人に手を振って宿の部屋へと入った。
シャワーを浴びてベットに転がり込む。
ふわふわのベットがすごく気持ちよくて、ゴロゴロしているうちにだんだん眠くなってきた。

正直疲れた。
自分の知っている世界とは全く違う世界。
魔物もいて魔法もあって、知らない人たちに長旅に。
何もかもがはじめての体験で。

でも出会えた二人はすごくいい人たち。


疲れた身体にベットは心地よく、
底へ落ちるように意識は深く深く落ちていった。

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