初めての戦闘を経験し、その後も何度か魔物が襲ってきた。
その度に二人に助けてもらい、何とか切り抜けている。
だが、だいぶ二人の体力も落ちてきていてあまりよろしくない状態だ。

「ずい分下まで降りてきたけど、まだ人の住んでいる気配が感じられないわね。」

「もうクタクタだぜ。あー、風呂はいりてぇ」

「文句が多いわよ。どうしようもないんだから我慢して!」

「うっせー、そんなことくらい分かってるっつーの!」

・・・。
こんな感じでさっきから喧嘩ばかりしているんだよ。
疲れてイライラしているのだとは思うが、私的には仲良くしてもらいたい。
でも、戦わず守ってもらっている私から言われても余計イライラさせるだけだから言えないでいるんだよね…

「ごめんね、私が戦えていれば二人の負担が減るのに…」

「気にしないで?ヒトミは民間人なんだから戦えなくて当然よ」

「戦われた方が足手まといだしな」

ルークのその言葉にティアが反応し、またもや喧嘩が勃発した。
あああああ、疲れてるなら喧嘩しないでー
余計疲れるだけじゃない!

もう見てるしかないなぁ、と諦めて傍観していたところに、私たちでない誰かの叫び声が聞こえてきた。

「うわ〜〜〜漆黒の翼がでたァ!!命だけはお助けを!!」

それもどうやら私たちを見ての事だったようで、「お金は出す」だの「助けてくれ」だの言いながら土下座をしている。
どうやらこの人は私たちを漆黒の翼とかいうのと間違えているようだ。

ティアとルークは喧嘩を一時中断して土下座しているおじさんを見る。
喧嘩をやめて欲しいと思っていたので、突然のおじさんの出現にちょっと感謝である。

私たちを漆黒の翼とかいうのと勘違いしたこのおじさんは辻馬車の業者の人らしくて、首都に向かうという。
ちょうど良いということで乗せていってもらうことになったのだが、馬車代としてティアのもつ綺麗な宝石を手放すことになってしまった。

「ティア、ごめんなさい。私たちのために…大切なものだったんじゃないの?」

「いいの。大丈夫よ。気にしないで」

「でも!馬車に乗らなくても歩いていけばいいじゃない!私は平気だよ?」

私は、ね。
二人に庇ってもらってるんだもん。多少の辛さは大丈夫。
でも、私を庇うことで二人の体力は普段の倍消耗していることと思う。
それを思うと馬車に乗るという選択は正しいのだろうが、だからと言ってティアの大事な物を犠牲にしてもいいのだろうか。
しかし、どう抗議してもティアの意思は固く、みんなで馬車に乗ることを変える気はなさそうだ。

すごく申し訳ない気持ちでいると、ルークが隣で「これで靴が汚れなくて済む」と暴言を吐きやがった。

「ルーク!!!」

たまらず声をだしてルークをたしなめる。
いきなり大声をあげた私に、二人は驚いているようだったが構わず続けた。

「なにその態度!戦えない私が言っても説得力はないだろうけど、ティアのおかげで歩かなくて済むのに、お礼も言わずにそんな暴言を吐くなんて…あやまって!」

ずいっとルークの胸元に飛び込んで、私より少し高い位置にある顔を睨みつける。
驚いてか一歩下がるが、私はそのまま睨み続けた。

「ティアに あ や ま っ て!」

オロオロしながら「もういいわよ」って言うティアを制止して言い続けると、ルークはぼそりと「悪かったよ」と呟いた。
言わした感は否めないが、表情には悪い事を言ってしまったのだと言う反省の色がうかがえたので、とりあえず許すことにしてティアに向き直る。
余計なことをしたかな、っておもったけど、ティアがにっこり笑ってくれたので良かったんだと思う。

「ティア、ごめん、ありがとう。ルークもごめん、私が言うことじゃないだろうけど…今のはちょっと許せなかった。」

てゆーか、正直、本当は私にはルークをなじる資格なんてないんだよね。
文句はいうけど、なんだかんだでルークは強い。

…戦いもできない、役には立たない。ただの足手まといの自分がすごく情けないな…

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