扉は開かれた
「じゃぁね!瞳、また明日!」
「うん、また明日ねー!」
ブンブンと手を振って友達と別れた。
交差点を右に曲がって4つ目の角を左に曲がり、自宅へとたどり着く。
「だたいまぁ〜」
まだ誰も帰っていない家に挨拶をし、部屋へ入るとそのままベッドに直行した。
イオンが居なくなって、もう1ヶ月が経とうとしている。彼が居たことが夢か幻のような、そんな気がしてきていた。
彼の残していった白いローブはアイロンをかけてしまっている。
それだけが、彼がいたという証拠。
私の言葉で傷つけてしまった友達とは、イオンのおかげで無事仲直りができた。
仲直りができたどころか今まで以上に仲良くなったと思う。
それもこれもどれも、彼がいたからだと感じていた。
あれから何度か山に登り、イオンを探してみたが会うことはなかった。
「イオン、戦争止められたかなぁ」
友達ともうまくいって夜空を見なくても大丈夫なはずなのに、気持ちはいつも悶々としていた。
考えるのはいつもイオンの事。
もう一度会いたいなぁ。
会って、お礼が言いたいんだ。
「瞳〜ご飯よ〜」
いつの間に母が帰ってきたのだろう。
時計を見ると20時を回っていた。
学校から帰ったのが17時だから…3時間はぼーっとしてたのか…
そう思いながら部屋着に着替えてリビングへ向かった。
次の日の朝、学校に行くためにいつものように起きた。
鞄の中には、携帯に財布に飲み物、お菓子に乙女セットを入れて準備完了!
教科書?そんなの置き勉してるから必要なし!
さて、行こうかな。
そう立ち上がったのだが、なぜかフッとイオンの顔が頭に浮かび、気持ちがソワソワして落ち着かない。
タンスからイオンのローブを取り出して、胸にギュっと抱いてみる。
(ヒトミ…!)
すると、遠くの方でイオンが私を呼ぶ声が聞こえてた気がした。
はっとして振り返るが、そこに彼は居るはずもなく落胆する。
なんか引きずってるなぁ。
あんな別れ方をしたせいか、いろいろ不完全燃焼なんだよね。きっと。
「うーーーーんもう無理!こんなときは山だよね!学校さぼっちゃえ!」
思うが早いか、イオンのローブを手提げに入れて学校に行く振りをして家を出た。
そのままUターンして山へと針路変更する。
どうせこんな気持ちで授業でても身に入らないしね。
昨日別れるときに「また明日」って言ってしまった友達にはメールでサボるって連絡を入れる。
するとすぐ「ずるい!私も誘えよ!」って返信が返ってきたから、ちょっと笑って「次ね」と返事を打った。
送信を確認後、自分の時間を邪魔されたくないので携帯の電源を落とす。
「ふー!」
いつもの特等席に横たわって空を見上げる。
耳をすまして鳥の鳴き声を追った。
チュンチュンと可愛い声を聞きながら雲の流れを見ていると、だんだんと気持ちが安らいでいく。
「気持ちいい…」
しばらくボーっと空を見上げていたが、ゴロンと横に寝返りをうったせいでポケットに入れていた携帯が地面に落ちてしまった。
あららー、とめんどくさ気に拾いに起き上がると、森の方でチカッと何かが光った様に感じた。
「?」
携帯をポケットに入れな直してから、荷物を持って光った方へと足を向ける。
普段なら無視していただろうが、光が見えた場所がイオンが消えた場所だったことに気付いたせいでイオンかもしれないと期待したんだと思う。
「誰かいるの?」
人が居ないか丹念に周りを見渡したがやはり人の気配はなかった。
「やだな、変に敏感になっちゃって...」
木の根が土からポッコリ出ているところに腰を下ろして、へへ、と笑ってため息をつく。
「はー、イオン・・・元気かなぁ。」
なにげなく彼の名前を口にした。
その瞬間
持っていた彼のローブが白い光が発し、巨大な円ができる。
私の体はそれから逃げる間もなく、光に包まれてしまった。
「え、な、なに!!?...きゃあーーーー!!」
悲鳴を上げたのもつかの間、瞳の姿はその場から消えていた。
そこにあるのはいつもと変わらない自然の景色。
不自然に落ちている日本には似つかわしくないローブ。
それのみだった。
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