お別れは突然で

「私、イオン好きだなぁ」

握り締めた手をそっと離しながらはにかむ。
イオンは顔を赤く染めながら「突然何を」と言わんばかりの顔で私を見た。
たけど、素直に自分の気持ちを伝えたい。
そう思って話を続けた。

「一緒に居て嬉しいし、楽しい。こんなに穏やかな気持ちになれる人は初めてだよ。もっとイオンのこと知りたいって、一緒に居たいって思う。正直、帰らないで一緒に居てくれればいいのにって思うくらい好きだな。」

「あ、ありがとう…ございます」

これは私の本当に思っている気持ち。
戦争を止めるという仕事があるのは分かってるけど、帰らなければならないのも分かってるけど、もう少し彼を知りたい。一緒にいたいと思っている自分が居る。






(イ…さま!)




「ん?イオン、今何か言った?」

「いいえ、僕は何も…」

人の声が聞こえた気がしたのだが、気のせいかな。
そう思ったが、



(イオ…さまぁ!)



「やっぱり誰かの声がする!」

そういって立ち上がって周りを見渡すが、誰か居る気配はない。
イオンは不思議そうな顔であたりを見回しているが、彼には何も聞こえないのだろうか。

(イオンさまぁぁ〜〜〜!)

今度はハッキリ聞こえた。イオンを呼ぶ声だ。

「イオン、あなたを読んでる声がするよ!」

「え、僕には何も聞こえませんが…」

もっとよく耳を済ませていると、下手の木々のあたりで声が聞こえる気がする。
なにかあるのかもしれないとイオンの手を取って、声の聞こえる方向へと向かった。

(イオンさまぁ〜どこですかぁ?)

「ここだ!このあたりから声がする」

声の聞こえる場所は、イオンが初めて出てきた場所のようだ。
イオンは相変わらず何も聞こえない様子で、あたりを見回していた。

「なにか変わったものがあったりしないかな?」

イオンの手を離し、しゃがみこんであたりを見回した。
声が聞こえるんだから何かスピーカーらしきものが落ちてるのではないかと思い草を掻き分け探すがそれらしきものは見当たらない。

「やっぱり気のせいだったのかな?何も見当たらないんだけど…イオン、何か見つけた?」

しゃがんだままイオンに話しかけた。
…しかし、いつまで経ってもイオンからの返事が聞こえてこない。

「イオン?」

不振に思って起き上がって振りかえる。
が、そこには先ほどまで居たイオンの姿はなかった。

「あれ?イオン?」

下がってイオンの姿を探すが、どこにも見当たらない。

「うそ、イオン?イオン、イオン!」

叫べども、イオンの姿はどこにも見当たらなかった。

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