目が覚めたら深い森の中にいた。
そんな展開の漫画やゲームはよく目にしていたが、いざ自分がその状況に陥るとなかなか納得できないものである。


吉川綾人は、自分の頬を力いっぱいつねりながら、この状況が現実なのかどうかを確かめた。おおよそ自分の知るそれではない景色に、茫然としつつ、つねった頬は痛かった。どうやら夢ではないらしい。
ふらりとバランスを崩した綾人は、後ろに生える木の幹に体を預け、そのままずるずるとしゃがみ込み、土からボコリと出ている木の根に腰かける。

「ほっぺた痛い…ということはやっぱり現実だよね。この状況・・・・」

目の前に広がる木の幹は赤く、葉は青く色づき、そのまま視線を空に移せば、見たことのない数の星々の海。そこには、現実離れした巨大な月が二つ、重なり合うようにのぼっている。手前の月は白く光っているが、後ろの月はまるで地球のように青く輝いていた。

どうして自分はこんな場所にいるのか・・・。
途方にくれながら、目が覚める前の状況を思い出していた。


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