「すきなんだけど。」
それは突然の告白だった。
俺の名前は杉崎悟。実家から歩いて10分の距離にある私立の男子校に通う16歳だ。
母親譲りの女顔に、16歳にしては低い身長のおかげで、学校では子供扱い。
子ども扱いなのはまだ許せるが、男子校という閉鎖された空間のせいか、女の子扱いされることもおおく…
入学してこの方、何度となく同級生や先輩後輩に告白されてきた。
そんな状況であるから、告白されること事態にはそんなに驚きはしない。
しかし…
「じょ、冗談だよ・・・な・・・?」
今日のこの告白には驚かないではいられなかった。
なぜなら、幼稚園からの親友に「好きだ」と告げられてしまったからだ。
「冗談で告白なんてするわけないよ。」
旧校舎の裏なんてベタな所に呼び出されて、まさかとは思ったが…しかし本当に告白されるなんて思わなかった。
幼馴染の彼、草薙優は、幼稚園の頃にお隣に引っ越してきて以来ずっと友達だ。
田舎のためか、小学校・中学校とクラスが離れたことなど一度も無かったし、高校も同じところへ進み、またもや同じクラス。
「もうこれ運命じゃねー」
なんて笑って話していたのはつい昨日のことだ。
いつもの冗談で運命なんて軽く言ったけど…どうやら優は本当に運命だと思っていたらしい。
「引っ越してきた時からずっと好きだったんだ、返事をして欲しいとは言わない。ただ、俺が悟のことを好きだと知っていてほしくて。」
「引っ越してきた時って…それって幼稚園から…」
「そ、ほぼ一目惚れ。でも仲良くなっていくうちにもっと好きになった。ごめんね、男に告白されるのを嫌がってるって知ってたのに、どうしても…どうしても俺の気持ちを伝えたくて。」
そう言って目を伏せる優に、俺は思わず首を横に振っていた。
そう、実際に嫌だなんて思っていなかったんだ。
今まで告白されてきた男どもは、正直気持ち悪くて仕方が無かった。
なのに、優に対してそんな感情は一ミリも沸いてこない。
なぜ嫌悪を感じないのか。
その理由を考えているあいだに、俺の態度にホッとした様子を見せた優は、「それじゃあ」と言って去っていった。
俺は、旧校舎裏の苔の湿った臭いをかぎながら、放心状態のまましばらくその場を動けないでいた。
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