02





そういうシリウスは少し悲しげな目をしていた。




シリウスの家庭についてはみんなある程度わかっていた。

だから誰もそれ以上深く追及しようとはしなかった。



しかし彼女は違う。








「へーシリウスって弟さんいたんだ。新入生の中でいちばん美人じゃね?」






ファーストネームが表情を変えず放ったこの言葉に全員がしばらくポカーンとしていた。























その後の生活もこれと言って変化はなかった。

シリウスの弟、レギュラスの話題も彼らの間で出てくることはなかった。







「ごめんなさいファーストネーム。私ちょっとマクゴナガル先生に呼ばれてるの。図書室で待ってもらってもいいかしら?」

「りょうかーい」








しかし、それもこの日をきっかけに終わりそうだ。
















「うわっ!」

「あうっ」









ファーストネームは図書室へ向かう途中の曲がり角で誰かにぶつかった。






「すみません。お怪我はありませんか?……っ!」




ファーストネームに手を差し伸べてきた少年、レギュラス・ブラックは彼女のネクタイの色を見た瞬間顔をしかめた。

彼はスリザリン、彼女はグリフィンドールだからだ。











(先輩とかに後で絡まれないといいけど……)





「ああいやこちらこそごめんなさいありがとう……って美少年にぶつかったのか私」







ファーストネームは顔を上げて第一声にそんなことを言った。






(この人……確かファーストネーム・ファミリーネームさんだったっけ)



「しかし私どこかで君のこと聞いたような……誰だっけ?」




ちょっと待って今思い出すから、そう言ってファーストネームは考え出した。
正直さっさと帰りたい気持ちでいっぱいのレギュラスだったが彼は礼儀っていうものを知っているのでちゃんと待っていた。













「えーーーっと、れ、れぎゅ…らすさん?」

「はい」

「うわ当たっちゃったよ。ファミリーネームはまったく出てこないけど。ちなみに正解は?」

「(変な人だ。普通ファミリーネームしか覚えてないのに……)………レギュラス・ブラックです」

「ああ、一年生の?シリウスが弟って言ってたっけ?」















弟、その言葉を聞いた瞬間彼の表情が歪む。



ああ、この人もか。
兄のことしか見てなくて、僕のことなんてついでぐらいにしか思ってない。
僕はまた兄と比べられるんだろうな。
別にもう慣れたけど。







そんなレギュラスの考えをよそに、ファーストネームは口を開く。





















「シリウスにこんな親切な弟がいるとか不公平過ぎるよね」






「………え?」










レギュラスは入学式で彼女の友人たちがしたようなポカーンとした表情を浮かべた。









「いやいやあいつはマジ無いわ。毎日一回は告白してくるし。場所わきまえてないし。ベタベタくっついてくるし。場所わきまえてないし。しかもこの間は完成したばっかのレポートの上に紅茶零してきたんだよ!?ありえなくない!?お前なんか一生チキンと付き合ってろよヘタレが!!」







レギュラスはファーストネームのマシンガントークについていけないでいる。

やっぱりさっき帰った方がよかったかもしれない。






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