ついさっきの話だ。
偶然すれ違った担任の先生に「お、丁度よかった。俺の机にあるダンボール箱教室まで運んでくんない?」と言われてなにが丁度よかっただ都合よく人のこと使いやがってちくしょうと心中で盛大に舌打ちしながらも仕方なく職員室に向かいそのダンボールを運んだんだ。
うわ何これ女生徒に持たせる重量じゃねぇよ何考えてんのあの人と思うような重さだったけど私は我慢して運び、教室の机にダンボールを置いた。
途端に手にはじわ〜っと痛みが広がり、肌は赤みを帯びていく。
そんな手のひらを眺めて「痛っ」と呟くと「苗字のそういうところが好きだよ。」なんて悪意たっぷりの笑顔で幸村が言ってきた。最悪だ。




「人が苦しい思いをしてるのを見て喜ぶなんていい趣味だなコラ」

「苗字だけだよ」

「てめぇさっきからそれっぽい台詞言っといたらときめくと思ったら大間違いだからな。」




おかげでさっきそこ通った女子に睨まれたんだけど。
絶対なんか誤解してるよねあれ。



「だいたいそれは回避出来なかった鈍い苗字が悪いんじゃないの?」

「いやどう考えても軽く職権乱用して私に荷物を持たせた担任が悪い。」

「ちなみにそんなところが好きっていうのは苗字の痛みに歪んだ表情のことだから」

「なるほど幸村は私の心を折りたいんだね」





神の子怖すぎる。




「さっきから不満そうだけど俺がこんなにフレンドリーに話す女子なんてお前ぐらいだからね」

「不満だらけだよ。あんたのフレンドリーは歪みすぎだ。」

「とか言って優しくしたら気持ち悪いとか言う癖にね。」

「よくわかっていらっしゃるようで。」

「苗字の痛みに歪んだ表情以外にも笑った顔とか案外お人好しなところとかも好きだよ。」

「………気持ち悪」

「照れ隠しなのバレバレだから。俺は愛情表現も歪んでると思うけど、付き合ってみない?」

「…………うん」











それだけの話です


手のひらの赤みはもう引いていて、今は幸村に繋がれてたりする





× T ×


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