静かな月夜 - 3
「………」
ムーンはしばらく、何も言わずに目を伏せていた。

ここに来るまでに、ムーンブルク城を目にした。
「城の様子を見ておきたい」と言い出したのは自分だが、いざ見てみると見るも無残な姿だった。その場で泣くのはこらえたが、思い出してしまった今、涙を止めることは出来なかった。

「……うっ……えっ……」
小さくすすり泣くムーン。まだまだ子供の彼女には、辛い現実だった。
そのムーンの背中に大きな影が浮かぶ。

「どうしたんだ、こんな真夜中に……」
ローレはやさしく微笑んで、ムーンの隣に来る。
「……やっぱり辛かったんだな。そりゃ故郷があんなことになったら俺なら絶対泣くだろうな……。だから、お前が泣かない所を見ていて俺は少し心配だった」
「…………」
「親父さんのことは、本当に残念だ……」
「えっ?」
ローレがぽつりとつぶやく。ムーンはローレを見上げた。

「それに……ムーンブルクのことも。だけど、今はお前しかいないんだ。お前ががんばらなきゃ、な?」
「……ローレ……」
「ハーゴンを倒して、城を元通りにすんだろ?俺もサマルも協力するさ。ただ……」
「……?」
「辛いなら、全部吐き出したらどうだ?大丈夫、俺がついてるから。お前の辛さを受け止めて、一緒に背負ってやることは俺にも出来るから……」

大きなローレの手がぽん、と肩に置かれる。
自然と涙が止まった。ここなら、ローレの隣にいれば大丈夫だと思えた。
prev * 204/243 * next
+bookmark
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -