静かな月夜 - 1
「着いたか……」
先頭のローレが足を止める。

「いい気持ち……」

心地よい海の風と潮の香り。ムーンは港町のこの匂いが好きだった。

ここはルプガナ。3人はドラゴンの角と呼ばれる塔を飛び降りてこの町にやってきた。町人に言えば嘘だろ、と笑われるのだが本当の話なのだ。

「着いたぞ、ムーン」
港町を感じすぎて、ローレがそばに来ていることに気づかなかった。ローレが笑顔で手を差し出す。ムーンはその手をしっかり握った。
「じゃあ、行こうか。町も見物したいし、さ」
「……うん。行きましょ」

2人は手をつないで並んで歩き出す。
……ところが。
「ねーねー2人ともー早くしてよー!!」
サマルが膨れっ面で2人を呼ぶ。

「……まったくあいつは……本当に空気読めないヤツだな……俺はムーンと2人でいたいのに……」
何気ないローレの言葉に赤くなるムーン。
「ちょ……ローレ、人前で////」
「ん?どうかしたか?」
「………なんでもない……」
消え入るような声でつぶやくムーン。

この男はまっすぐだけど、度が過ぎるほどまっすぐなのだ。恥ずかしいようなセリフもさらりと口にする。本人は全く気づいてないみたいだけど。

「早くってばーー!!」
サマルがまた呼んでいる。
「あー!分かったよ!今行くって!」
ローレが仕方なくサマルの元に向かう。それでも、ムーンの手はしっかり握っていた。
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