やわらかな日差し - 3
座ったあと、不意に前を見ると、クリフトは言葉を失った。

「……す……すごいですね……」
そこはなんと、サントハイム城だけでなく、ふもとの町も、そして海を隔ててはるかエンドール城までが一望できる絶景スポットだった。
「でしょ!何回かこっそり来てたんだけど、今度はクリフトと2人で来ようかな、って思ってたから……」

「姫様……」
クリフトが口を開く。しかし、あと一歩が踏み出せない。

「その帽子、どうされたんですか?いつものとは少し違うようですが……」
「ああ、これ?このへんは風強いからね。飛ばされてもいいやつかぶってきたのよ」
「そうですか。それにしてもいい眺めですね。風も気持ちいいですし……」
「そうでしょ。私なんだか眠たくなってきたな……」
アリーナがそう言って軽く伸びをした時だった。

いきなり強い突風が吹き、アリーナの帽子が風にさらわれた。
「「あっ!!」」
2人の声が重なった。
「私、帽子取ってきます!姫様はここで待っててく……」
クリフトの言葉はそこで止まった。立ち上がろうとした時、アリーナに服の裾をギュッと掴まれたのだ。
「ひ、姫様……?」
「帽子はいいよ……このまま隣にいて、クリフト……」
その声は小さかったが、はっきりと聞こえた。

「そう……ですか、分かりました」
高鳴る鼓動を抑えつつ、再びアリーナの横に座る。

しばらくすると、風は穏やかさを取り戻した。日も西に傾き始めていた。
(そろそろ帰らなければ……王様も心配なさるだろうし……)
「姫様、そろそろ戻りましょうか?」
「………」
「……姫様?」
クリフトはアリーナの顔を見た。気持ちよさそうに眠っているではないか。
このまま起こすのも悪いし、もう少し寝かせてあげることにした。
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