あの頃のままで…… - 1
広い空の下、いつものように俺たち3人は草原を歩いていた。

「ローレ、待ってよ!歩くの早いよ―」
後ろからサマルが走ってくる。
「……って、お前がまた余計なことしてたんじゃないのか?」
「そんなことないよ、ちょっとお花摘んでただけだよ」
「それだよ!……まったく、花摘みなんて、もう子供じゃねーんだから……」
相変わらずのサマルにため息が出る。

「きれいな花があったんだ。はい、ムーン、とっても似合うよ」
「ありがと、サマル。私は、花、好きなんだけどな」
ムーンが花を受け取りながらつぶやく。
「そりゃあお前は……」
女の子だから、という言葉が喉まで出かかったがこらえた。
「何よ?私は何?」
「い、いや、何でもねーよ」
つい顔をそむける。
「何よー、最後まで言いなさいよー」
少しふくれるムーンを後目に、俺はまた歩き出した。

「もう……」
ムーンのため息が聞こえる。
と、もう1つ、タッタッタッ、という靴の音。
振り返ると、サマルが走ってきていた。
「はい、これローレの分ね」
そう言って手渡されたのは、さっきの花だった。
「お、俺はいらねーよ。花なんかすぐ枯れちまうし、第一俺に花って似合わないだろ?」
少なくとも自分ではそう思ってる。

「でも、枯れる前まではとてもきれいじゃない。短い間だけど、花だって一生懸命なのよ」
「……まさか花で説教されるとは思わなかったよ」
「ローレ、似合うよ」
気づけば、俺の鎧の隙間に花が。
「……って、何やってんだよ!全然似合ってないじゃねーか!」
思わず大きい声が出る。
サマルはそんな俺に構わずニッコリ。
しかもムーンまでクスクス笑ってるし……。

「……まあ、サンキュ。大事にするよ」
俺は仕方なく花を受け取って、2人の方を見た。
すると、2人の笑顔が広がっていた。
俺は少し笑い返して、自然の空気をたっぷり吸い込んだ。
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