その時が来るまで - 4
そして、ついに「その時」がやって来た。
村の人たちが右往左往する中、わたしは一目散にある場所へと走っていった。
―――彼のいる、あの場所へ。
無事だった彼を見て、わたしは少し胸をなで下ろした。
「ソロ…良かった」
「シンシア!」
「きゃっ…」
彼は少し強引に、わたしの腕を引いた。地下室の隅っこで、わたしは問い詰められた。
「どうして?どうして村の人たちはぼくを隠さなきゃいけないの?シンシア、何か知ってるんでしょ…?」
わたしは口を開けなかった。これから起こることを、わたしはとても言えなかった。
「ソロ…あなたは、伝説の勇者なの。こんなところで死んじゃいけないの。だから、約束して。何が起こっても…地上には出ないって…」
「えっ…?それってどういう…」
「約束してっ!!」
「わっ…分かったよ…」
その言葉を聞いて、わたしは少し安心した。そして、彼の大きな手に自分の小さな手を重ねて、わたしは言った。
「ソロ…大好き」
「ぼっ…ぼくもシンシアが大好きだよ」
「…モシャス!」
わたしは思い切って呪文を唱えた。わたしの手が、彼と同じ大きさになる。わたしはゆっくりと、部屋の入り口に歩いていった。
「えっ…何を…」
「…ソロ、わたしのこと忘れないでね」
「まさか…ダメだ!そんなの絶対ダメだよ!シンシア!」
呼び止める声を背中に聞いて、わたしは一つ大きく息をついた。
「約束、したからね。破ったら、許さないよ」
「シンシア!ダメだよ!シンシア…!」
「…さようなら…!」
彼の言葉を背に、わたしは運命の待つ地上への階段を、ゆっくりと上っていった―――。
end