バトンタッチ…? - 4
「僕が…王様に…」

バルコニーから、遠くに見える険しい山、そのずっと向こうに広がる海を眺めて、テンはため息をついた。そして、自分はもう王位継承に適した年齢になったことを考えると、急に時間が止まって欲しいと思えてきた。

「僕…一体どうしたら…」

「テンー!入るよー!」
背後のドアから、ソラの声が聞こえる。テンは振り向いて、「うん、いいよ!」と返し、再び外の景色に目を戻した。

ソラがドアを開けて、まっすぐバルコニーへとやって来た。そして、テンの隣に立って同じように外を眺める。子供の頃は、二人してここから身を乗り出し、よくアベルとビアンカを心配させたものだ。

しばらく、沈黙が流れていく。が、やがてその沈黙が破られる。意外にも、先に口を開いたのはテンだった。
「ソラはさ、僕が王様になること…どう思う?」
「私?」

うん、とテンが頷く。テンはソラに自分の考える答えを口にして欲しかった。だが、ソラは彼の思いと真逆のことを返した。

「私は大賛成。テンが王様になるんだったら、そばで全力でサポートする。…だけど」

大賛成と聞いて、テンの表情が一段と曇る。かと思えば最後の「だけど」で、はっとした表情に変わった。

「…だけど、テンは自分の思う答えを出したらいいと思うの。何もお父さんと同じにする必要なんてないもの」

ソラは首を振りながら、優しい口調で後を続けた。

「だってそうでしょ?お父さんは子供の頃、ここにはいなかったもの。グランバニアに来て何日かしか経ってないうちに、王様になっちゃったのよ。サンチョから聞いた話だけどね」
「サンチョから…?」
「うん。だから、テンは自分の気持ちに向き合ってみればいいと思うの。自分の気持ちを押さえつけてまで、王様になろうとしなくてもいいんじゃないかな?」

それを聞いて、テンは感じた。これほどまでにソラが自分のことに親身になってくれることが、とても嬉しかった。気がつけば、

「テン?…泣いてるの?」
「ソラ…ありがとう…」

テンはその両の瞳から、一粒ずつの涙を零していた。
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