バトンタッチ…? - 3
「…お父さんが王様になったのは、今から十八年前…つまり、今のテンたちと同じ歳なんだ」
「へえ…」
テンはそうだったんだ、と頷いているが、勘のいいソラはアベルが何を考えているか、少し見当がついてきた。

「…それで、今日に限ってお父さんはあそこには座ってない」
アベルがちらりと玉座に目をやった。つられて、テンとソラもそちらに視線を向ける。その時、テンはうっすらと何かに気づき、そしてソラは確信した。

「…テン、これがどういう意味か分かるかい?」
「まさか…」
テンではなくソラが声を漏らす。その声で、テンがようやく気づいた。

「僕が…新しい王様に…?」
「大正解よ」
ビアンカがテンにウインクをする。テンはしばらくの間、口をぽかんと開けていた。

「どうだい?お父さんに代わって、新しい王様になってくれるかい?テンなら立派なグランバニアを作れると思うんだけど…」

アベルの言葉を、テンは聞いていなかった。今まで十八年間生きてきた中で、まさか自分が王になるなど考えたこともなかった。しかし、言われてみればもうその歳だ。王子に生まれた以上は、いつか必ず後を継ぐ。その考えが、少しずつ飲み込めてきた。…それでも。

「きっ…急にそんなこと言われたって…僕、分からないよ!」
「テン!」

立ち上がって階段を駆け上がっていくテンをソラが呼ぶが、テンはそのまま自分たちの部屋に閉じこもってしまった。

「やっぱり…早すぎたのかしら?」
心配そうに言うビアンカに、アベルは微笑んで首を振った。
「…いや、心配ないよ。これでいいんだ…。ソラ、ごめんね。テンを元気づけてあげてね」
「お父さん…分かりました」

ソラは頷いて、彼女もまた階段を上っていった。その後アベルとビアンカは、誰もいなくなった階段をしばらく見つめていた。
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