バトンタッチ…? - 2
階段を降りて、王の間に下りると、いつも玉座に座っているはずのアベルが、今日に限ってその場所に座っていなかった。
玉座から離れた、広間の隅のソファーに、アベルとビアンカが並んで座っていた。アベルは二人を見つけると、こっちこっち、と手招きをした。
「テン、ソラ、わざわざごめんね」
「そんなの、別に気にしてないよ。どうしたの?」
「ちょっとお話があって、二人に来てもらったの」
「お話…ですか?」
普通の親子と同じように話すテンに対して、ソラはきちんと王族の親子らしく敬語で話す。アベルもビアンカも、子供たちの性格を無理に変えたくはなかったので、このままでいいと思っているようだった。
「うん、でもその前に、二人ともお誕生日おめでとう。はい、これ」
ビアンカはそう言うと、包みを二つ取り出し、テンとソラに手渡した。
「ありがとう。ここで開けたらもったいない気がするから、部屋に戻って開けてみるよ」
「うん、そうしたらいいよ。じゃあ、ちょっと大事な話をしようかな」
アベルが妙に改まって、テンの方を向いた。テンは「何?」と返して、アベルの言葉を待った。しかし、先に口を開いたのは、ビアンカだった。
「テンたちも、もう十八歳なのよね…。お母さんがあなたたちを産んだのがちょうど二十歳だから…本当、時間が経つのって早いわ」
「そうだよね。お父さんなんか、ちょうど今の二人と同じ歳だったよ」
二人が懐かしい表情を浮かべる。アベルもビアンカも歳の割に、若々しく見えた。八年以上も時間が止まっていたのだから、当然と言えば当然なのだが。
「父さん、一体何が言いたいの?僕、まだ分からないよ」
「私も分からないです。お父さん、教えて下さい」
子供たちは首を傾げた。アベルはうん、と言って、一つ大きく息を吐いて、後を続けた。