バトンタッチ…? - 1
森深き国、グランバニアは、その森の静けさとは打って変わって、異様な熱気に包まれていた。
今日は、王子・テンと王女・ソラの、十八歳の誕生日。彼らが通るたび、兵士たちが口々に祝福の言葉を述べる。
「王子様、王女様、お誕生日おめでとうございます!」
「おめでとうございます!」
「ばんざーい!ばんざーい!」
「「あ、ありがとう…」」
あまりの兵士たちの熱狂ぶりに少したじろぎながら、お礼を返すテンとソラ。子供のころは、なぜ自分たちの誕生日でこんなにもおめでとうと言われるのか疑問だったが、この歳になった今は十分に理解できた。
「ふぅ…みんな相変わらずだよ」
ドスンとベッドに倒れ込み、息をつくテン。出会う人全員からお祝いされたため、ここまでくるのに骨が折れた。
「そうね…でも、悪い気はしないわ。お祝いされてるんだから」
ソラは隣のベッドの端にちょこんと座っている。
「まあね…たださすがにオーバーなとこもあるけど」
「うん、確かに」
「そうだ、僕もソラも十八になったけどさ、ソラはまだ誰かと結婚したりしないの?」
途端に、ソラが赤くなる。
「もう…そういう話は苦手だって言ってるでしょ!」
「ごめんごめん。ただ、ちょっと気になったから、さ」
「気になった…?」
「そりゃ、僕のたった一人の妹なんだから、気にならないわけがないよ」
「…ありがと。でも、まだそこまで考えられないわ。じゃあ逆に聞くけど―――」
ちょうどその時、扉がノックされた。少し残念そうに言葉を切り、扉に向かって「誰?」と聞いた。
「テン様、ソラ様、アベル王がお呼びです。王の間にいらして下さい」
「父さんが?何だろ…」
「さあ…分かんないけど…とりあえず行きましょ!」
二人は部屋を出て、アベルの待つ王の間に向かった。