Theme5 糸
<糸>
「はぁ、はぁ…」
サマルとムーンは、敵の目を盗んで物陰に隠れた。
「時間はねぇ、とっととやれよ!」
2人のいない間、時間稼ぎを任されたローレ。敵はあの邪神シドー、1人で戦えるほど甘い敵ではない。
「うん、ベホイミ!」
「ベホマ!」
2人は回復を済ませる。そして、物陰から素早く飛び出し、ローレの援護に回った。
「よし、じゃあこのまま終わらせるぞ!」
完璧なコンビネーションだった。事前にムーンが立てた作戦と同じ。ローレが敵の目を引きつけ、サマルはその隙にベギラマを放つ。剣で切り込むこともある。
そしてムーンは回復役に回る。穴の無い作戦だと、彼女自身も思っていた。
だが、戦況は変わってくる。激しく動き回るローレがだんだん疲れてきたのだ。そして、切り返しの時に足を滑らせ、転んだ状態で激しい炎に包まれた。
「いやああああ!」
ムーンは悲鳴をあげた。父の最期と今の状況が、彼女には重なって見えた。そして、その場に座り込んでしまう。ムーンの心の糸が、ぷつりと切れた瞬間だった。
「ムーン、危ない!」
サマルがムーンに覆い被さる。次の瞬間、激しい熱風を感じた。サマルは炎からムーンを庇ったのだ。
「なんで…」
「女の子の顔に傷でも付くのは見たくないからね…!」
サマルはそう言うと、ムーンを隠すように立ちはだかった。そして、遠くからは声が。
「ムーン!戦いはまだ終わってねーぞ、早く立て!」
「ローレ…?」
「俺があの程度でくたばるか!俺のしぶとさは、お前が一番よく知ってるだろ?」
「ムーンがダメな時は、僕たちが頑張るから。ムーンの切れた糸は…」
「俺たちが繋ぐ!」
2人は笑顔を向けている。ムーンはゆっくりと立ち上がった。
「うん、ごめんなさい、もう大丈夫だから!」
3人はまた、さっきのようにシドーに攻撃を重ねていった。
その後、糸は二度と切れることは無かった。そして、しばらくすると、3人の幸せな顔が見られたという。