Theme2 オルゴール
<オルゴール>


旅の間、行く先々の町の宿屋には、なぜか必ずと言っていいほどオルゴールが置いてあった。

私が元に戻って最初に泊まった宿屋はムーンペタだった。2人はそれまでに何回か泊まってたらしいけど、部屋の隅に置かれたオルゴールには気付かなかったらしくて。

私が興味深くオルゴールを調べてるのを見て、「んなもんに興味はねーよ」ってそっぽを向いて寝ちゃうローレに、「何それ?そんなのあった?」って首を傾げるサマル。

最初はそんな態度だった2人なんだけど、旅が進むにつれてだんだん変わってきて。

ベラヌールの町でサマルが倒れて、私たち2人が世界樹の葉を探しに出発する時、「…オルゴール…鳴らしといて…欲しいんだ」って途切れ途切れに聞こえたサマルの言葉は今でもはっきり覚えてる。

ローレも、私の誕生日のプレゼントにオルゴールをくれて、「…旅が終わったら、一緒に聞かせてくれよな」って言ってくれて。

オルゴールに興味を持ってくれたのが嬉しいんじゃない。それをきっかけに、2人が変わってくれたのが一番嬉しかった。


今も私の部屋の隅には、ローレからのオルゴールが置いてある。聞く時の感情によって、それは自在に音色を変える。悲しい時も嬉しい時も、この音を聞くと心が安らぐ。


今日は誕生日の時の約束を果たしに、2人がやってくる日。このオルゴールは、どんな音色を響かせてくれるのか。

「ムーン、久しぶり!」

「…あの日の約束、守りに来たぜ」

立派なオルゴールを囲んで、みんな耳を澄ました。

「…いい音色だな」

「…ローレにオルゴール、似合わないよ…」

「うるせーな、ほっとけ!」


「自ら鳴る琴」と書いて「オルゴール」。本当にぴったりだと思う。私たちも、自分たちの手で明るい未来を切り開くことができた。


このオルゴールは私にとって、過去の全てが詰まった大切な宝物。


このオルゴールに、そしてあの日のオルゴールに、


―――心から、ありがとう。
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