Chapter 3-3
「……テスト?」
「そうだ」
次から次へと、予想外の単語が飛んでくる。スィルツォードは理解が追いつかない。そうしている間に、次の言葉が入ってくる。
「冒険者職でもなく、剣を振るのも初めてだったのなら、他の武器も触れたことはないな?」
「えーと……他の武器って斧とか鎌とか……ですか?」
「そうだ。あとはブーメラン、槍、弓、まあ色々あるが……よっと」

ダンケールが担いだ荷を下ろす。ドサッ、という音とともに包みが開くと、中からは今し方挙がった種々の武器が顔を覗かせていた。
「一通り持ってきた。いい機会だから、お前さんに一番合う武器を決めようじゃないか」
「……ってことは、今から敵と戦ってオレに合う武器を見つけるってことですか?」
「そういうことだ。なに、俺がついているから心配はしなくていい。危なくなったらすぐに助ける」
「分かりました」
「よし、なら早速といこう。一つ好きな武器を選んでくれ」

武器の山を前に考えること数十秒、スィルツォードはおもむろに槍を手に取った。
「槍か。まあ扱いやすい方ではあるが……おっと、ちょうどいいところに来たぞ。気をつけろ!」

ダンケールの声が大きくなった。スィルツォードが振り向くと、昨日倒したモンスター、大烏がこちらへ飛んできていた。
「……よっと!!」
狙い澄まして、勢いよく突き出す。その槍先は、見事に一撃で鳥駆を貫いた。
「よし!」
「ほう……!」

驚嘆の声を漏らすダンケール。
「滅茶苦茶な構えだが、突きは鋭かったな。あれだとここらの雑魚は相手にならんな」
「あ、ありがとうございます」
「槍も考える余地あり、だな。よし、次の武器にいこう」

槍を置いて、次の武器を選びにかかるスィルツォード。
日はまだまだ高くなる。日没まで、時間はたっぷりと残っている。


◇◇◇


「おっはよー!!」
バーン!! とドアが叫ぶ。
「ティマリール……元気なのは結構だが、もう少し静かに開けてくれないか?」
「おっと、ごめんよー。つい勢い余っちゃって」

頭を掻きながら、部屋に入ってくるティマリール。先ほどのお小言は、この部屋に住むセルフィレリカのものだ。

「ティマリールさんはお元気ですね」
「あれ? みーみーもいたんだ。シスターまで!」
「お……おはよう、ティマ」
セルフィレリカの部屋には、先客がいた。穏やかに微笑むミスト、気弱そうに笑うリーゼ。
「ふたりともおはよー。クーちゃんが呼んだの?」
「……いい加減クーちゃんと呼ぶのはやめて、わたしの名前も覚えてくれないか?」
「えー、なんで? かわいいからいいじゃん」
嘆息するセルフィレリカと、ぶすっと膨れるティマリール。
しばらく無言の応酬が続いたが、どうも悪意のないティマリールには暖簾に腕押しのようで。

「……やれやれ」
やがて折れたのはセルフィレリカの方だった。
「この際それは置いておこう。三人を呼んだのは、スィルツォードのことについてだ」
「スィルツォードさん……ですか?」
「今朝……ミストといっしょにご飯食べてたけど……」
「えぇっ!? みーみーずるいよ、ボクだってスィルと食べたかったのにー!」
「ティマリール、頼むから話をそらさないでくれ。本題に入れないだろう」

ややイライラしたような声で、セルフィレリカが言う。さすがにティマリールもそれは感じたか、「はーい……」とおとなしくなった。それを確かめてから、セルフィレリカはまた口を開いた。

「実は、数日後にランシールに行かないといけなくなった」
「ランシールですか。しかしどうしてまた急に……?」
「今朝クエストを受けたんだ。神殿の魔物退治のな」
「神殿にも……魔物……出たんだ……」
「そこまで大事ではないだろう。『へそ』が絡んでいるだろうから、一応そこも調べてくる。だから、しばらくギルドを留守にする間、スィルツォードのことをお願いしたいんだ」
至って真面目な面持ちで、セルフィレリカは三人にそう頼んだ。
「でもさクーちゃん、ボクたちはその間スィルに何をすればいいの?」
「あたし……スィルツォードさんの……こと、あんまり知らない……」
「単にある程度一緒に行動してもらえればいいんだ、彼を一人でクエストに行かせたりしなければそれでいい」
「ずいぶんスィルツォードさんに優しいのですね。何か理由がおありなのですか?」
とミスト。
「彼をギルドに引き入れたのはわたしだ。勝手がわからないうちは、わたしに聞くといいと言った。本来ならわたしが責任を持たねばならないのは承知の上だが、今回の依頼は断るに断れないものだったんだ、だから勝手な願いだと分かっているが、わたしが不在の間、彼の相談役になってもらえないだろうか、ということだよ」
とセルフィレリカ。
「なるほどねー、そういうことならボクも協力するよ!」
「役に立てるか、わかんない……けど、あたしも……」
「ええ、是非」
並んだのは、元気なウインク、決意のうなずき、柔和な微笑み。そのどれにも、暖かな気遣いの色が見て取れる。

「……みんな、ありがとう。わたしはいい仲間を持ったよ」
肩の荷が一つ下り、安心したセルフィレリカだった。
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