Epilogue-11
楽しい時間というものは、往々にして過ぎるのが早い。それは世界を越えた常識というものなのだろうか、あっという間に辺りには夜の帳が下りていた。
アルム「…みんな、パーティーが続いてる間、こんな所に集まってもらってありがとう。ラルドさんたちも、ありがとうございます」
ラダトーム城の中庭に、アルムたちは出てきていた。口振りから察するに、アルムが皆に呼びかけたようだ。
アルム「本当は、みんなと離れて1年経ったらこうしてパーティーをするつもりだった。でも、4年前のぼくは軍に入りたて、まだまだ見習いの兵士だったから、とても国を挙げてパーティーをしようなんて言える立場じゃなかった」
苦笑いしながら、アルムは「ごめんなさい」と軽く頭を下げた。
アルム「だから、ぼくは決めた。軍の中で一番上まで行けば、ぼくの言うことを聞き入れてくれるだろうって。それで、準隊長になった時に、陛下にお願いしてみたんだ。「一度、大きなパーティーを開いてみませんか」ってね」
ディル「それで、その提案が受け入れられたってこったな。4年間、必死に頑張ったんだな」
アルム「はい、そのつもりです。これからも頑張ります」
キース「そんで、俺たちをここに呼んだのにはまだ別の用事があんだろ?」
キースが話を元に戻すと、アルムは「はい」と頷いて全員を見た。
アルム「みんなと…誓いを立てようと思うんです」
誓い?
アルムの突飛な発言に、一同は首を傾げた。皆がそんな様子なのを見て、アルムは言葉を付け加えた。
アルム「これからも、みんなそれぞれの生活があれば、仕事だってあると思います。でも、1年に1回は、こうしてみんなで集まって、楽しく話をしたいんです」
アルムの表情は、5年前のそれとはまるで違っていた。大人びたその瞳が、1人1人の目に映った。
ラルド「なるほど。その意見には私も賛成しよう」
レイシア「とっても素敵なアイデアだと思うわ!」
アレク「いいこと言うね、アルム」
タア「…そんぐらいは良いんじゃねぇか」
アルムの提案に、異を唱える者は誰一人おらず、皆が彼に同調した。5年という歳月は、1年半という付き合いに比べるとあまりにも長すぎたのだ。
クラリス「…それじゃ、誓いの言葉はアルムにお願いしようかしら?」
クラリスが促すと、アルムは「わかりました」と頷いた。
しばらくの間、場には沈黙が流れた。