Epilogue-6
そんな皆が待ち望んだ日が、いよいよやってきた。
互いに遠く離れた場所から、一堂に会する今回の集まり。事前に連絡を取り合い、アルム以外の全員は一度ルプガナに集まってから船でラダトームへと向かう手筈になっていた。
空が白み出して間もない頃。
屋敷の中から、1人外へと出てくる影があった。ラルドである。
ラルド「…雲もない。いい夜明けだ」
水平線の彼方、海と空の境界が白く輝く。ほんの少し顔を出す太陽の光は、しかし十分なほど眩いものだった。
天気は快晴、海も凪いでいる絶好の航海日和。出発の時間までは、あと1時間ほどあるが、不思議とそれまでぼんやりと蒼空を眺めるのも悪くないと思えた。
ラルド「………」
どれほどそうしていたか、不意に屋敷の扉が音を立てて開き、2人が出てきた。アレク、そしてクラリスは、ラルドを見つけると「早いね」と言った。
ラルド「まあ…な。大人気ないが、今日が楽しみでまともに眠ることすら出来なかったものでな」
アレク「らしくないね。雨、降ったりしないかな?」
クラリス「空を見る限り、きっと大丈夫よ。海も穏やかだし」
3人で並んで立って、しばらく色々なことを思い出す。
ラルド「10年前、この屋敷を出た時には、まさかこんなことをしているなどとは夢にも思わなかった。我が事ながら、先の人生は全く知れたものではないな」
アレク「まあね…僕も、10年前って言えば普通に家でゴロゴロしてたっけ」
クラリス「ところで…キースたちはどうしたのかしら?」
そう言えばいない、といった風に言うクラリス。それに対して、ラルドはそこそこに答えを返した。
ラルド「キースとディルの2人は仲良く寝坊だろう。セルとルイはここに出る前に私が起こしておいたから、直に出て来るはずだ。で、キットなんだが…屋敷の中にはいなかった。どこに行ったのか分からないが…いや、前言撤回だ」
ラルドが見る先に、2つの人影が見えた。朝日に照らされて、近づいてくるのが誰であるか分かった。長身のキットと、その横にはユリスがいた。
キット「まず1人、久々の再会ですよ」
キットがそう言うと、ユリスは「お久しぶりです」と笑って、ぺこりと頭を下げた。3人はユリスに声をかけ、久闊を叙した。
キット「これからどんどん来ますよ。楽しみに待ちましょうか」
5人になった集まりは、屋敷の入り口で次の来訪者を待った。