Epilogue-1
精霊の使者、アルム=レンバート。

彼は、心から信じ合う12人の仲間たち、そして希望の勇者キース=クランドたちとともに、破滅の危機に瀕していた世界を救った。わずか13歳の少年が成し遂げた奇跡の偉業は、永遠に語り継がれる歴史の1つとして数多の書に記された。

そんなアルムたちが世界を平和に導いてから、早5年の月日が流れた―――。



心地良い潮風が吹き抜けるここ、ルプガナの街では、今日も人々は強い風に負けることなく、仕事に商売に漁に精を出していた。

そんな中、街一番の大きさを誇る建物、ルプガナ教習所に1通の手紙が届いた。

手紙を最初に受け取ったのは、かつてのアルムの師であり、この屋敷の当主、ラルド=アーロン。2年前に祖父のレグルス=アーロンが亡くなってから、彼は当主を務めていた。

手紙はどうやら海を隔てた先、ラダトーム国から宛てられたようだった。これは何事かと、ラルドは封を切って中の手紙を確かめる。少し読み進めたところで、ラルドは文面から目を離し、広間へと向かった。


ラルド「ああ、みんなここにいたか。重大発表だ」

並んで長机で朝食をとっていたキース、アレク、クラリス、ディル、キット、セル、ルイ、そしてフェアル。全員に向かって、ラルドは手紙を右手に掲げて言った。

ラルド「ラダトームから、お呼び出しだ。これを見てくれ」

そうして、手紙を開いて机に置く。皆はそれを興味深げに覗き込んだ。

文面を見ると、どうやらラダトームで開かれる食事会への誘いのようだった。合わせて日時、場所など、簡単な知らせが記されている。そして、差出人の部分には、こう書かれていた。


『ルプガナ教習所第1期生、ラダトーム国特別部隊準隊長 アルム=レンバート』


アレク「アルム…アルムって、あのアルムだよね!?」
クラリス「間違いないわ…うわぁ、すごい懐かしい…!」
ディル「あいつ、準隊長になったのか…まだ18のクセして出世しやがって…!」
キット「もうあれから5年ですからね…食事会が待ち遠しいですね…」
キース「会えるのは1週間後らしいな。あいつがどのくらい成長したか、久々に見てやるか!」

かつての教え子からの招きに、彼らは迷うことなく参加を決めた。その後、怪訝そうな表情の生徒たちに、ラルドは事情を簡単に説明して食事会の日の訓練は全て中止し、皆自由に行動してもよいと伝えた。

ラルド「今頃、他の者たちにも手紙は行っているのだろうな…皆、どうしているだろうか…」

実に5年ぶりの教え子たちとの再会を前に、ラルドはそんなことを呟くのだった。
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