Chapter 32-15
アルム「すみませーん、どなたかいませんか?」
祠へたどり着いたアルムたちは、そこに住む人の有無を確かめた。すると、アルムの声からほどなくして、奥からやや年のいった男性の声が聞こえてきた。
*「旅の方かな?このような絶境の地に、よくぞ参られた。遠慮せずに入りなされ」
それを聞いて、8人は心底安堵した。もし門前払いを食らえば、この寒い山で野宿などという事態に陥るところだったのだ。
8人が中に入ると、奥から神官服に身を包んだ男が現れた。男はアルムたちを見るや、大層驚いた様子だった。
*「なんと、まだ年端もゆかぬ者のみでここまで上り来るとは!これまで色々な旅人を迎えてきたが、ここまで驚かされたのは初めてだ…!」
レイシア「とんでもないです。私たちは、この近くにいる敵を打ち倒すために来たのですが、一晩を明かす場所に困っています。もし良ければ、こちらに一晩だけ置いて頂けませんでしょうか…?」
丁寧な口調で、レイシアが頭を下げる。すると神官は、「このような場所で良ければ」と快諾してくれた。
*「思い出すな…ずいぶん前にも、そなたらと似たような境遇の者がおったよ。魔王城跡へ向かうつもりなのだな?」
セリス「魔王城跡…そこに、敵がいるって言うのか?」
*「左様。だが、辺りを岩山が囲んでおるから徒歩では行けぬ。そこで私は、かねてよりここの地下と城跡を旅の扉で結んでおいた」
セイファー「本当ですか…!?」
驚いたのはセイファーだけではない。皆、このことに驚きを見せた。
*「うむ。明日、魔王城跡へ赴く時にはそれを使うがよい。だが、気をつけるのだ。何者かが、城跡の地下に何かを造っておるやも知れぬ」
アリュード「何かを造っている…としたら、何だろう…」
*「分からぬ。だが、とてつもなく恐ろしい予感がするのだ…。ともあれ今夜は休まれよ。隣に部屋が2つあるゆえ…」
神官はそう告げて、奥に戻っていった。8人は来たるべき戦いに備えて体を休めるため、すぐに休息に入った。
…ただ1人を除いて―――。
〜続く〜