Chapter 32-5
アルム「…すごい」
アルムは繰り返した。単純に、その言葉しか出て来なかったのだ。それほど、目の前の光景とレイシアには驚かされた。
セリス「…お前、いつの間にあんなとてつもない技を覚えたんだ…?」
レイシア「…やり方だけはクラリスさんから教わって…後は自分で…っ…」
アリュード「…レイシア!!」
ガクン、と膝が折れ、レイシアは床に膝をついた。息も、かなりあがっていた。
レイシア「…大丈夫よ。だけど、まだまだだわ…1回撃っただけでこんなになるなんて…」
相当の疲労が、一気に体に押し寄せてきたようだった。それからしばらく座り込んでいたが、やがて少し楽になったと、レイシアは立ち上がった。
レイシア「行きましょう、アルファたちを倒すのよ!」
レイシアを先頭に、彼らは部屋の反対側にある階段を駆け上がっていった。最後尾にアルムとセリスがいて、アルムが階段を上ろうとした時、セリスに呼び止められた。
セリス「アルム、ちょっといいか」
アルム「…なに?どうかした?」
セリス「ああ、レイシアのことだ」
アルム「レイシアの?」
深刻な表情のセリスに、アルムは首を傾げた。セリスはアルムの肩に手を置き、半ば耳打ちするように言った。
セリス「あいつのことだから、また無理してると思うんだよ。あんなど派手な技をぶっ放した後だ、きっと立ってんのも辛いはずだ」
アルム「ああ…そうだね。レイシアはそういう性格だよね…」
セリス「とにかく、一息つける場所に行くまでは戦いの時もあいつを楽させてやろうぜ。な?」
アルム「分かった。それじゃ、ぼくたちもここから出よう」
アルムは頷き、階段を駆け上がった。後ろから同じような足音が聞こえるのを感じながら。
◇◇◇
階段を上りきり、通路を進んでいくと、やがて地上に出た。太陽の光を感じながらも、温もりはさほどなかった。
セイファー「なんだか…寒いよね…」
アンナ「海が近いのかも…かすかに潮の匂いがするけどね」
リズ「ここは…」
皆が見知らぬ土地に目を瞬いているところを、彼女だけは複雑な表情でいた。
アリュード「リズ…ここを知ってるの?」
リズ「…ええ、ここは多分ノアニールの近くだわ」
レイシア「ノアニール…?」
リズ「一応、私の故郷になるのかしら…あまりいい思い出はないのだけれど」
そうこぼして、リズは目を細めて遠くの地平線を見つめた。