Chapter 32-2
キース「………!」
ルーナ「あぁっ、みんなー!!」
ルーナの叫びも虚しく、大穴は祠に走った者たちを悉く飲み込むと、小さくなって閉じた。信じがたいことだった。メンバーの半分以上が、一瞬で消された。
ザルグ「取り決めには従ってもらわねば…違うか?」
キースに向かって嘲笑うザルグ。しかし、キースはそれに対してこう切り返した。
キース「何が取り決めだ。通行料といいながら、事実はあいつらをどっかに監禁でもしておくつもりなんだろ?」
ザルグ「…なに?」
キース「そうだとすれば、残念ながらそいつは期待外れだ。どんな頑丈な場所に飛ばされようが、あいつらは必ず脱出するさ」
ザルグは思わず閉口した。奴め、3年前と比べると切れるようになっている。
ザルグ「…よく分かったな。なぜだ?」
キース「さあな。勘だと言っとこうか?俺の頭の悪さぐらい、調査済みだと思ってたんだけどな。違ったのか?」
ザルグ「…何を白々しい。さて…奴らがどうなったかは置き、貴様らを殺す前に私から1つだけ問いを投げよう」
突然話題を変え、ザルグはキースにこう訊いた。
ザルグ「何故、アラン=ディークなる人物に扮していたのか、気になるのでな」
キース「…お前、そんなことを俺に訊くのか?」
何だこいつは、という風に肩をすくめてから、キースは「そんなことなら、話してやるよ」と語り始めた。
キース「3年前に全てが終わった後、俺は1人で旅に出た。世界をもっと知るためと、あとラルドの奴が2年も1人旅してたってんで俺もやってやろうって思ってな。
けど、旅に出たら俺の正体がバレるバレる。いつも知らない人に囲まれて、いい加減うんざりしてきた。この人たちは、俺がキースだからって理由で群がってくる。だから、俺はキース=クランドでなくなることにした。
要は、誰にもつきまとわれずに静かに旅したかったってことだ。それともう1つの理由は、俺の正体を明かしたんだから大体分かるだろ?」
話し終えると、キースは腰に差している剣に手をかけ、ゆっくりと抜いた。
キース「疑問が解決したところで、決着をつけるとしようぜ。俺たちは先に進まなきゃならないんだ」
ザルグ「…良いだろう。だが、それは叶わぬ。貴様ら全員、ここで血肉と化すのだ!」
ザルグは目を見開き、着ていたローブを吹き飛ばした。
キース「みんな、行くぞ!俺たちの力を見せてやろうぜ!」
一同「「「おおーっ!!」」」
3年越しの戦いの火蓋が今、切って落とされた。