Chapter 1-12
その時、シェルトが部屋へと入ってきた。「はい、とりあえず座って下さい」と言って、彼はちらりと時計に目をやった。アルムはふと後ろを見て、唖然とした。なんと、いつの間に戻ってきたのか、アリュードが何食わぬ顔をして座っていたのだ。どこにいたのかと聞きたいが、もう訓練が始まる。仕方なく、アルムは前に向き直った。

全員が座るのを待ってから、シェルトは口を開いた。
シェルト「えー、呪術学を担当する、キット=シェルトです。この中に、前から私を知っている人が1人いるんですが…」
全員に目を向けた後、シェルトはユリスに視線を向けた。
シェルト「実は、ベルリベンツさんとは住んでいた村が同じでしてね、何年も前から知り合っているんですが…ここでは、全員平等に評価しますので、皆さんそのつもりでいて下さいね」

何人かを除き、生徒たちははい、と返事をした。

シェルト「それでは訓練に移ります。その前に少しだけ。そもそも、「呪術学」とは何を学ぶのか?これは、呪いの術という意味ではなく、呪文技術の略なのです。つまり、皆さんに学んでもらうのは、初歩的な回復補助呪文や特技というわけです」

なるほど、とアルムは納得した。呪いのかけ方などを習うと思っていたアルムは、内心ほっとしていた。

シェルト「初めのうちは、初歩的かつ簡単な呪文や特技からやっていきます。それでは、まず今回からはホイミの呪文の習得を目指して訓練に励んで下さい」


アルムは懸命にこの訓練に取り組んだ。日頃から、回復呪文を持っていないことがとても不便だと分かっていたからこそ、ホイミは確実に覚えたかった。だが、呪文は初心者のアルムは、なかなか思うように成功しなかった。

◇◇◇

シェルト「…以上で今日の訓練を終了します。明日に備えて、皆さんゆっくりして下さい」
セリス「えっ、もう終わり!?まだ昼前だぜ?」
セリスが驚いたようにシェルトに聞く。シェルトは微かに笑みを浮かべて、セリスに言った。

シェルト「フォードくん、人間はあれこれ命令を受けた方が行動しやすいんです。しかし、あなたたちはその上のレベルにいるんです。何をすべきか考えることも、この生活で学んで下さいね?」

呆然とするセリスを残し、シェルトは部屋を後にした。時計の針は、まだ正午前を指していた。
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