Chapter 1-8
アルム(…行くぞ!)

アルムとて、何も出来ない訳ではない。ベラヌールの子どもたちの中では、ダントツの強さを持っていた。自分の持つ最も威力のある技で岩が割れなければ、その時は自分に力が足りなかったと割り切るしかない。しかし、やってみなければ分からない。アルムは渾身の力で、岩に斬りかかった。

アルム「真空斬り!!」

バカッ!!
見事に、岩はバラバラになった。アルムが岩を割ることに成功したその直後、ユリスも槍を構えて岩に突っ込んだ。
ユリス「…五月雨突き!!」
無数の突きに耐えかねて、岩は砕けた。アルムは笑顔で、ユリスに駆け寄った。

アルム「やったね!」
ユリス「…でも、これじゃダメね」
アルム「えっ…?」
ユリス「だってそうでしょ、岩を相手に、自分の一番の技を使わないと勝てないんだから。もしこれがモンスターだったら…わたし、きっとやられてたわ」
アルム「………」

ユリスの落ち着いた様子に、言葉を失うアルム。そうか、ここではこういう考え方をしなくちゃダメなんだ―――。そう分かった。

ゼクトル「良かったぜ、全員合格で。じゃあ、まだ時間あるけどこれで終わりだ。部屋に戻ってくれて構わ…」

ゼクトルが不自然な所で言葉を切ったため、2人はゼクトルの方に目を向けた。彼は何かを見ているようで、その視線をたどると、こちらに向かってくるアーロンの姿があった。

ゼクトル「…ちょっと待っててくれ」
アルムとユリスにそう告げて、ゼクトルはアーロンの元に走る。数十秒間2人は話していたが、やがて揃ってこちらに戻ってきた。

アーロン「ベルリベンツ、悪いが今から私と一緒に来てくれ」
ユリス「???…はい…」
不思議そうな表情で、ユリスはアーロンに従った。「じゃあ、また」とアルムに言い残し、2人は屋敷内に入っていった。それを見送りながら、ゼクトルはアルムにこう言った。

ゼクトル「アルム、お前の攻撃が一番強かったぜ」
アルム「ええっ!?」
ゼクトル「4人のあの攻撃の中じゃ、一番威力があった。まあ俺から見れば、だけどな」

背中越しの嬉しい言葉に、アルムは少し自信を持てた。「ありがとうございました!」と、アルムは部屋に走っていった。

ゼクトル「…楽しみだぜ…どいつもこいつも」
残ったゼクトルは、1人空を見上げて小さな声で呟いた。
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