Chapter 21-6
ちょうどその頃、宿に1人残っていたタアが目を覚ました。部屋一面を見回すが、アルムたちはどこにもおらず、さらにはセレイスもいない。気が付けばこの時間に、ここに1人だった。
うるさくなくて清々する、そう小さく呟いたタアだが、一瞬でも(あいつらはどこに行った?)と探しに行こうとした自分自身を半ば疑いにかかっていた。
タア(…何やってんだか)
アホらしい、と小さく鼻で笑い、タアは立ち上がって部屋を出て行った。
◇◇◇
さて、そのアルムたちはというと。
ルーナ「すごーい、これかなりレアなんだよ!?」
ルージャ「あっ、こっちのこれも珍しいものだって聞いたよ!」
アルム「ちょっと…2人とも反対の方向に行かないで!」
右、左にそれぞれ向かおうとしたルーナとルージャを、必死に呼び止めるアルム。この賑わう店通りで、ひとたびルーナとルージャを見失えば、探して見つけ出すのは不可能に近い。順番にちゃんと回るから、と2人に告げ、3人固まっての行動を心がけた。一応この中では最年長だし、先ほどのファッグとトゥーダの一件もある。不安要素は拭い切れない…のだが。
*「さあ、お次は名物、ラダトーム饅頭!お土産に、贈り物にどうぞ!」
ルーナ・ルージャ「!!!」
同時に2人が走り出す。言ったそばからこれである。
アルム「あぁっ!?ちょっと2人とも、ぼくの話聞いてたのー!?」
慌てて追いかけるアルム。観光はまだまだ終わらない。
◇◇◇
その頃、閑散とした広場にはセレイスがいた。宿主から一連の騒ぎについて聞き、急いでこちらに来たのだ。
セレイス「すみません…ここで何があったんですか?」
水を撒いている男に話しかけるセレイス。すると、男は騒ぎに巻き込まれた1人だったようで、事の一部始終を話してくれた。
*「…というわけさ。それで、その人が魔物に斬りつけた時に飛んだ血を、今洗い流してるんだ。血が付いた広場なんてみんな嫌がるからね」
セレイス「そうだったんですか…どうもありがとうございました」
礼を述べて、セレイスはもう一度広場を見渡してみる。
セレイス(まさかアルムが巻き込まれていたなんて…それに、アランって人は一体何者なんだろう?アルムに聞いてみる必要が…)
セレイスがそうやって考えこんでいる時、後ろから誰かに「アレクさん…?」と呼ばれた。くるりと振り向けば、そこには。
セレイス「…レイズじゃないか?」