Chapter 21-5
アルムたちがこの騒ぎに巻き込まれる少し前に、セレイスはラダトームの大臣と顔を合わせていた。

セレイス「あなたが…?」
???「うむ、わしが新しく大臣を務めているエルガだ。よろしく頼む」
セレイス「はい、よろしくお願いします」

エルガはしばらく、セレイスをじろじろと見定めるような仕草をしていたが、やがて「立ち話もなんだから」と、セレイスを小さな部屋へと案内した。

エルガ「さて…アレク=セレイスだったかな、王より話は伺っているぞ」
セレイス「それはどうも…大変恐縮です」
エルガ「うむ、それで…今回の用件は何かね?」
セレイス「はい、そのことなんですが…」

一瞬間を空けて、セレイスは自分の中で仕切り直して再び口を開いた。

セレイス「単刀直入に言います。国王さまがご病気だということですが、それだけでここまで入城を取り締まる必要があるのでしょうか?」

わずかに、エルガの眉が動いた。

エルガ「…これは国の方針だ。それ以上はそなたの知るべきことではない」

先ほどとは打って変わって、冷ややかな声と表情。セレイスは怪訝に思い、さらに深く切り込んだ。

セレイス「…そこまでする必要はないのではありませんか?国王さまは旅人にも広くお城を開かれていたじゃないですか」
エルガ「その寛大なお心をお持ちの王が倒れられているのだ、万全を期すのが当然だろう」
セレイス「それでも…さっき聞きましたが、ラダトーム国民の方にも何の説明もされていなかったそうじゃないですか。突然というのは、国の施行する制度としてはおかしいと思いますが?」
エルガ「王が倒れられたのも突然のことだ、民に説明する時間は無かったのだ」
セレイス「いくら急でも、数日の猶予はあるでしょう…本当は、国王さまの身に病以外の何かが起こっているのではないのですか?」
エルガ「お前に一国の政策をどうこう言われる筋合いはない!それに、王が病み臥せっておられることは事実だ…!」
セレイス「おられる「ことは」事実?他の何かは偽りだということですか?」
エルガ「…ええい!誰か、こやつをつまみ出せ!!」

エルガが怒りを露わにし、衛兵を呼びつける。すぐさま2人の衛兵が現れ、セレイスの両腕を掴んで引っ張り出す。

セレイス「だっ…大臣!質問に答えて下さいよ!」
エルガ「黙れ、国の安泰を脅かす愚か者が…連れて行け!」

必死に抵抗するも、衛兵2人の力にはかなわず引きずられていくセレイス。やがて無駄だと分かったのか、セレイスは抵抗を止め、遠ざかっていくエルガにこう言い放った。

セレイス「僕は、あなたなんかが大臣だと認めない。必ず大臣から引きずり下ろしてみせます!」
エルガ「…連れて行け!」

衛兵に引っ張られ、城から追い出されたセレイス。通行証も取り上げられ、もう城には入れなくなってしまった。

セレイス(大臣のあの態度…絶対に何か裏がある。それを暴き出さないと…)

新たな仕事を見つけ出し、セレイスは宿屋へと戻っていった。
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