Chapter 21-1
セレイス「それじゃ、行ってくるよ。みんなをよろしくね」
アルム「あっ、はい、わかりました」
ただ1人目を覚ましていたアルムに「今日1日は自由行動だ、って他のみんなに伝えといて」と告げ、セレイスはラダトーム城へ向かった。皆昨日の疲れは尋常でなかったらしく、昼を過ぎてもアルム以外はいまだ爆睡中という状態だった。
アルム「…暇だなぁ、ちょっと外出てみようかな」
セレイスが城に行ってから1時間ほど経った頃、アルムはあまりに暇になったので、セレイスからの伝言を簡単に紙に書き残して、ラダトームの城下町に出て行った。
宿屋を出てから市街地の方に歩いて行くと、アルムは何か異変が起こっていることに気付いた。街の中心を彩る噴水の前、ちょうど広場となっている所に、ちょっとした人だかりができているのだ。
アルム(…なんだろ?)
嫌な気配がした。どうも旅芸人や有名人に群がっているのではなさそうだ。さらに近づいていくと、アルムは人だかりの中心にちらっとながら何かを見た。
アルム「モンスター…!?」
アルムが見たのは2匹の大きなモンスターだった。牛のような魔物と、鳥のような魔物。後者はわずかに空中に浮かんでいた。
???「聞いたぜ聞いたぜ、この国の王が病気だって…なぁ、トゥーダ!!」
牛のような魔物が、そう声を張り上げる。トゥーダと呼ばれた鳥のような魔物は、その言葉にこう返した。
トゥーダ「ケケケ…お前ら全員、今日が命日になるぜ…なぁ、ファッグ!」
ファッグ「その通りだ、この街も今日で無くなるんだ、グハハハハハハ!!」
高笑いしながら、2匹は叫んだ。それを聞いた街の人々はいよいよパニックに陥ったのか、叫び声を上げながら散り散りになって逃げ出した。
トゥーダ「おっと、逃がさんぜ!トルネードウォール!!」
トゥーダがそう叫ぶと、逃げ出そうとした人々の前に、大きな竜巻の壁ができた。広場全体が、街から隔絶された。
*「ひっ…ひええっ!!」
*「誰か…誰か助けてくれぇっ!!」
助けを求める者も多くいたが、全員逃げようとすることで頭がいっぱいだった。むしろ、人を助ける余裕など元から無いのだ。そしてアルムも―――人混みに近付きすぎたために、竜巻の壁に閉じ込められてしまっていた。