Chapter 20-4
その日の朝、アルムは部屋の入り口近くから、すっかりきれいになった部屋の中を見てわずかに目を伏せ、息をついた。―――ひとまず、この部屋ともお別れだ。

思えば、1年近くここで共同生活をしていた。ずいぶん部屋に愛着も湧いてきた頃であるだけに、世話になったこの部屋に別れを告げるのは、何か辛いものがあった。もっとも、最終実習の期間によっては、まだ少し世話になるかもしれないのだが。

ルーナ「…アールム!どしたの、元気ないよ?」

ふと後ろから、軽やかで元気な声が飛んできた。振り向くと、そこにはいつもと変わらないルーナがいた。

アルム「うん…この部屋とも、みんなともお別れだと思うと、ちょっと寂しくって」
ルーナ「んー…確かにそうかも。あたしもこのお部屋で、4人で楽しくおしゃべりするのとか好きだったからねー。でも…」

でも?そう聞いたアルムに、ルーナはルーナらしい笑顔でこう言った。

ルーナ「あたしたちは、お別れしたわけじゃないよ。まだちょっとここで寝るかもしれないし、あたしたちが会おうと思ったら、いつでも会えるしね♪」
アルム「そっか…そうだよね。うん、ありがと、ルーナ」
ルーナ「気にしない、気にしない!あっ、セリスー!レイシアー!」

こちらに向かってくる2人に、大きく手を振るルーナ。そんな彼女を見ていると、何を寂しがることがあろうか、という気持ちになるから不思議だった。

セリス「実習の内容が何か、庭で発表するってよ。行こうぜ!」
レイシア「ここでの生活の最後の締めくくりね、頑張りましょ!」

4人は互いに頷き合い、廊下を一歩一歩、ゆっくり歩いていった。1年前はお互い顔も知らなかったのが、今では深い友情と信頼で結ばれた大切な仲間となっている。

『人生は何が起こるか分かんねえ。自分のも、他人のも』などとゼクトルがいつか言っていたか。しかしそれも本当だな、とアルムは思った。

今隣にいる3人の仲間と共に、アルムは最後の実習に向かう。その背中はもはや、1年前のガチガチに強張ったそれとは別人になっていた。
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -